日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第59回大会・2016例会
セッションID: 3-1
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2016例会:口頭発表
高等学校家庭科における安全な住まいに関するアクティブラーニングの提案と検証
*広川 智子飯野 由香利
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抄録
【研究の背景と目的】
高等学校の家庭科における「安全な住まい」では家庭内の不慮な事故への備えの他に、地震対策として「避難用具の準備」や「家具の転倒やガラス等の破損の防止などの備え」及び耐震構造(筋交い・火打ち・面材による耐震補強)等について教えている。これらは不慮の事故や災害への備えに関する知識の習得に留まっており、家庭実践が難しい。一方、耐震として突っ張り棒や金具を取り付けることを教えるが、適切に取り付けるためには壁や天井の裏側の仕組みを理解していなければならない。さらに耐震構造では牛乳の紙パックや「紙ぶるる」等を用いて「筋交い」の効果を体験する断片的な学習に留まっており、家の仕組みや構造及び筋交いの原理を教えていない。
本研究では、「安全な住まい」に関するアクティブラーニング方法を提案し、授業を実践して、その効果を検証することを目的とする。家の仕組み(柱や梁の役割及び荷重の流れ)と耐震構造における筋かいの三角形の原理を生徒自身が体験して学習する方法を考案する。授業ではこれらの体験学習を実践した後に、体験で得た知識や原理が家ではどのようになっているのかを理解するために1/10組立模型を用いる。1/10模型を実際の施工順に組立てて様々な部材から構成されていること、及び木造軸組工法におけるピン接合(力により可動する接合)の仕組みを理解する。さらに、地震の備えにおいて必要な空間認識(家具の配置や避難経路の確保等)や寸法感覚を試作した物差しと畳を用いて養成する。
【授業実践の内容】
2015年12月中旬に新潟県N市内のD高校建築学科2年生37名を対象に3時間の授業実践を行った。10班(1班3~4名)に分かれて1/10模型を組立てた。
授業展開を示す。1)家の仕組みの「柱と梁の役割」と「荷重の流れ」及び「筋かいの三角形の原理」を生徒が体験した。試作模型を用いて梁の有無によるたわみを可視化した。2)試作した「1/10の30㎝物差しと畳」と1/10組立模型を用いて、生徒が土台を計測し、畳の広さを確認した。3)1/10模型を用いて2階建住宅を組立てながら様々な種類の部材や接合部について学んだ。4)筋かい・火打ち・面材による耐震補強方法とバランスを考慮した補強位置を学習した。5)起震装置を用いて1/10組立模型の揺れの度合いを耐震補強前後で可視化により確認した。
【アンケート調査の概要】
授業後にアンケート調査を行った。回収率は100%、37人のデータを得た。アンケートの内容は、1)柱や梁の役割及び日本の伝統的な寸法に関する熟知度、2)耐震補強方法の熟知度、3)1/10組立模型を用いたことによる理解度などである。アンケートの結果の分析結果からアクティブラーニング方法の効果を検証した。
【結果】
1)「柱や梁の役割」や「荷重の流れ」を示す方法
辞書を頭の上にのせて体重を測ることや3人で腕を伸ばして支え合う体験及び試作模型で梁の有無の変化を可視化することを考案し実践した。その結果、各部材中の荷重の流れについて柱84%、梁95%の理解に役立った。
2)「筋かいの三角形の原理」や「耐震構造」を示す方法
直立で3人肩を組み両側から交互に引っ張ると不安定であり足元を広げると安定する体験と1/10組立模型の揺れの実験の結果、耐震構造の理解度が100%であった。
3)「寸法把握」や「空間把握」を示す方法
1/10の物差しを用いて模型を計測し、畳を敷いて面積を把握する体験、模型で家を造る体験(三次元)により、8畳など部屋の広さと寸法の感覚を習得できたと答えた生徒は95%であった。
4)授業を受けた生徒の感想
「勉強になった」と回答している割合が100%であり、アクティブラーニングが有効であることを明らかにした。
5)日常生活における教育実践方法の提案
学校での耐震補強を事例に取り挙げて、三角形の原理や補強位置に関する説明する。自宅や学校で家具等の転倒時の安全確保や避難経路の確認を事前に把握する。
本研究は科学研究費助成事業(基盤研究(c) 課題番号15k00925 代表者 後藤哲男)の研究助成を受けた。      
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