日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第61回大会/2018年例会
セッションID: A4-3
会議情報

資金準備に焦点をあてた生活設計の授業の試み
大学進学のための資金準備の場合
*仲田 郁子, 久保 桂子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
1.目的
 これまで筆者らは、高校生に対する生活設計教育の指導内容について検討を重ねてきた。その中で、生活設計に必要な資金準備の方法については、種類が多く理解しにくいこと、ローンには消極的であることも明らかになった。
 平成28年度より、「大学進学」を資金準備の必要なライフイベントとして取り上げ、生活設計における資金準備の学習に取り組んでいる。授業の目的は(1)進学と金銭資源との関係を軸にして、設定された選択肢の長所・短所を検討すること、(2)自分の希望するライフコースのために必要な金銭資源とその準備について考えることの2点とした。昨年度はさらに選択肢を改良し、理解を深めるために討論の方法に工夫を加えて、再度授業を実施した。本報告では、その効果を考察するとともに、今後の課題を検討することを目的とする。
2.方法
 授業は、本校普通科2年生6クラス(243名)及び国際コミュニケーション科1年生1クラス(40名)で実施した。科目は家庭基礎、実施時期は2018年2月である。
 「生涯の生活設計」の単元の指導計画は、(1)人生におけるリスクと生活資源の活用、(2)生活資源としての社会保障制度、(3)ライフコース別の家計シミュレーションの順で進め、その後本授業として(4)生活設計と金銭資源を実施した。本単元は、「生涯の生活設計」に加えて、「青年期の自立と家族・家庭」、「共生社会と福祉」、「消費生活と生涯を見通した経済の計画」を合わせて構成・立案した。
 本授業の流れは、まず学歴別生涯賃金、奨学金や教育ローンの実態、非正規雇用など若者の就労の実態などの資料の解説を行い、検討材料を提示する。続いて「大学に進学したいが、経済的な余裕がなく難しい」という状況を設定し、3つの選択肢を提示する。グループ討論と質疑応答を行い、それぞれの選択肢の長所と短所について検討する。最後に大学卒業後の奨学金返済の実態を示す資料を提示し、自分の考えをまとめさせた。授業実践後、生徒の振り返りの記述などから、授業の効果を検討した。
 今回の選択肢はA進学をあきらめる(後年お金が貯まってから進学することを含む)、B保護者に頼らず、自分がアルバイトをして進学する、C借金をして進学する(教育ローン、奨学金)の3つとした。
 またグループ討論と全体討論では、各グループに3つの選択肢の中の1つを割り当て、その選択肢の優位性とともに他の選択肢への批判をまとめさせ、優位性を発表させた。各グループの発表の後、相互に他の選択肢への批判を行い、議論の活発化を図った。
3.結果
 選択肢の設定を修正したことによって、生徒の選択の偏りが緩和できた。グループ間の討論では、Aに対しては、自分の希望する職業につけない可能性が大きい、Bに対しては、アルバイトに追われて忙しく、十分に勉強できない、友人との交際にお金がかかり、資金を賄えないのではないか、Cに対しては、将来の返済が大変で就職できなかったら大変なことになるなど質問がなされた。それらに対する回答として、「付き合いを我慢する」「ブラックバイト」に気をつける」、「4年間は我慢してがんばり必ず就職する」、「高校生の今の内から少しずつ資金を貯める」などが挙がり、昨年に比べリスクのイメージが具体的になった。
 このように「借金する」または「アルバイトに追われる」というリスクと「進学したい」というライフデザインの関わりについて、より焦点化して思考を深めることができた。
著者関連情報
© 2018 日本家庭科教育学会
前の記事 次の記事
feedback
Top