抄録
目的 本研究では高校家庭科における非正規教員の勤務・教育実態について検討する。非正規教員の問題は広く知られてきたが、家庭科の非正規教員の実態は十分に明らかにされていない。よって、京都府立高校に勤める非正規の家庭科教員を対象とし、その実態を解明する。
方法 2017年12月から2018年3月に、2016・2017年度に京都府立高校で家庭科を担当した非正規教員26人(うち男性1名)を対象として、勤務・教育実態に関する聞き取り調査を行った。なお、2017年度の京都府立高校の正規家庭科教員は62人、非正規教員は37(常勤10、非常勤27)人で、非正規教員の占める割合は37.3%である。調査内容は、勤務条件(雇用形態、勤務校の決定、賃金、福利厚生、担当科目、単位数、勤務時間)、勤務環境(施設・設備、生徒の状況、専任教員との関係性、管理職との関係性)、専門性(教員経験年数とその内容、授業内容と教材研究、研修状況、ロールモデルの有無、中学校高校および大学での家庭科に関する学習歴)、ライフイベント、家族関係などである。
結果 対象者の雇用形態は常勤教員9人非常勤教員17人であった。非正規教員として働く理由は、20代~30代は正規教員を目指す人が多いが、40代以上は事情により退職を余儀なくされ非正規を継続する場合が少なくない。この他、同僚や委員会から依頼され、正規教員が定年退職後に非常勤を行う場合がある。非正規教員は勤務条件をはじめ多くの点で劣悪な状況にある。勤務条件の問題点としては、勤務校、時間数、賃金などについて希望を述べる場がなく管理職に決定される点が大きい。また、私立高校では福利厚生を受給できる場合があるが、公立では規定はあるものの週18時間以下の非常勤講師には適用されない点をあげる人もいた。勤務環境の問題点として、実習の準備と後片付けなどの残業が日常化している。非常勤のみの学校では家庭科室が廃止されるといった事態がみられた。また、人間関係上の問題では専任より非正規の方が経験年数や年齢が高い場合、悩みをもつことが多い。専門性については公的研修を受ける機会がなく、自己研鑽を積んでも評価されない点が不満となっており、非正規歴の長い教員ほどその傾向がみられた。
次に、対象者を教員経験年数別に4区分し、分析した結果を示す。
第1期は10年未満の初任期(10人)で、主として20代の独身教員である。正規教員を目指す常勤教員(5人)が多い。学習意欲は高く、第4期の教員から指導を受け自主的研修会に参加する教員が複数いる。一方、採用試験の受験勉強をする時間が取れないことや次年度の就業や将来に対する不安をもっている。第2期は10年から25年未満の中堅期(4人)で30代から50代の幅広い年齢層が含まれる。うち常勤講師(3人)は第1期と同様の問題を持っていた。正規教員として勤務したが、育児や家事を優先して退職し、子どもが学齢期となり再就職した人もいる。中高家庭科に加え他校種の教員免許をもつなど、教職に対する意欲や熱意は強い。この期では経験を積んでいるが故に、正規教員との関係に悩むことが増えてくる。第3期は25年以上の熟練期(7人)で50代から60代の既婚の教員である。4人は正規教員としての経験があり、退職して子どもが学齢期となった後に非正規として勤務している。全員が非常勤であるが、週16時間以上担当している人が4人おり労働時間は少なくない。優れた教員をロールモデルとして地道に努力してきた姿が伺えるが、正規教員との関係が難しく、自己研鑽を積んでも評価されない問題などの悩みを抱えている。第4期は35年以上の円熟期(5人)であり、60代の府立および私立高校を定年退職した教員である。意欲が高く、長年の研鑽に裏打ちされた高い専門性をもっている。うち、3人は家庭科教育研究者連盟京都サークルの会員であり、研修会を行うなど若手の非正規教員の育成に対して指導的役割を担っていた。