日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第61回大会/2018年例会
セッションID: B3-1
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理系女子高校生のキャリアパスとロールモデルによるライフデザイン学習の効果
*荒井 きよみ
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抄録
【目的】第5期科学技術基本計画では、人々に豊かさをもたらす超スマート社会の実現を提起し、科学技術イノベーションの基盤的な力の強化を喫緊の課題にあげ、科学技術イノベーション活動を担う人材を巡る諸問題の解決に向けたシステムの改革を求めている。そのひとつが、女性の活躍促進である。女性研究者数は未だ低い水準にあり、幅広い教育活動を始め、改善へ導く取り組みに期待が寄せられている。本研究では、理系女子高校生のライフデザイン学習に、キャリアパスの明確化やロールモデルがもたらす効果について明らかにすることを目的とした。

【方法】首都圏のスーパーサイエンスハイスクール(以下、SSH)指定校の1年生364名を対象に2017年度の「家庭基礎」においてライフデザイン学習、そして同年11月にSSHクラスの女子を対象にSSH事業の理系女子交流会を実施した。対象校の1年生はSSHカリキュラムで学ぶ生徒(以下、SSHクラス)が2クラスと学習指導要領で学ぶ生徒(以下、非SSHクラス)が7クラスであった。本研究では、SSHクラス女子25名(以下、SG群)と非SSHクラス女子124名(以下、NG群)を比較した。なお、「家庭基礎」のライフデザイン学習で、100年間の人生設計をワークプリントに試作し、主体的・協同的な学びを通し、高校生のキャリアパスの明確化を図った。SSH事業の理系女子交流会では、理系女子大学生・院生の研究発表を聴き、さらに自らの研究発表に対する助言を直接受け、昼食を共に摂る等、ロールモデルと過ごす時間の提供を行った。分析データは、質問紙調査(2017年5月及び2018年2月実施)、理系女子交流会感想及び質問紙調査(2017年11月実施)、人生設計感想(2018年3月実施)である。
 2017年5月及び2018年2月実施の調査項目は科学技術イノベーションを担う人材に求められる資質・能力について「課題発見力」「課題解決力」「プレゼンテーション力」「英語力」の4項目を6段階のルーブリックで示し、得点化した。さらに「環境問題解決に貢献できる」「経済成長に貢献できる」「地域文化の振興に貢献できる」「社会の安全・安心に貢献できる」「科学的な知識や技術を日常生活で活用できる」の5項目を5件法で示し得点化した。また、研究者志望について「自然科学系研究者になりたい」「社会科学系研究者になりたい」「人文科学系研究者になりたい」の3項目を5件法で示し得点化した。理系女子交流会の調査項目は「ロールモデルを見つけた」「将来就きたい仕事が見えた」など18項目を4件法で示し、得点化した。

【結果】2017年5月及び2018年2月実施のデータを2要因分散分析(対応あり)で分析したところ、「課題発見力」「プレゼンテーション力」についてはSG群がNG群より有意に高く、両群とも2017年5月より2018年2月が有意に高かった。「課題解決力」「英語力」についてはSG群がNG群より有意に高く、SG群は2017年5月より2018年2月が有意に高く、NG群は2018年2月が有意に低かった。4項目とも交互作用が有意であり、2017年5月にNG群がSG群より高かった。「自然科学研究者になりたい」についてはSG群がNG群より有意に高かったが、両群とも2018年2月が有意に低かった。

【考察】SG群では科学技術イノベーションを担う人材に求められる資質・能力が育成されていた。また、記述データから以下の2点を導いた。
①キャリアパスを意識することで、今すべきことを見出していた。
・苦手科目である数学を克服して、将来生物関係の職業に就きたい。
・様々な人や文化に触れる機会を増やし、東京オリンピックでボランティアをやる。そして日本から世界を変える仕事を見つける。
②ロールモデルからなりたい職業を決定するというよりは、働く意義を考えていた。
・人のために頑張ることができる人になりたい
・色々なことに挑戦しつつ、何か一つ極めたい
・やりがいのある仕事がしたい
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© 2018 日本家庭科教育学会
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