日本家政学会誌
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酵母の違いがパンの品質に与える影響
山田 密穂小泉 昌子赤石 記子峯木 眞知子
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2021 年 72 巻 12 号 p. 796-807

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抄録

 天然酵母パンについては, 広く知られている白神こだま酵母 (以下, S), ホシノ天然酵母パン種 (以下, H) があるが, それらについての基礎的な研究は少ない. 本研究では, これら2種と対照酵母としてインスタントドライイースト (以下, D) を用いて食パンを調製し, パンの品質および食味特性を比較・検討し, 食パンに与える酵母の影響と特性を明らかにすることを目的にした. 3種の酵母を使用したドウの動的粘弾性測定, 砂糖の有無によるドウ発酵試験を行った. 3種の酵母で調製したパンは, その断面や組織構造を観察し, 重量, 体積, 水分含有率, 色, テクスチャー, 香気成分を測定し, 組織構造を観察した. また, 官能評価による食味特性および嗜好を検討した. その結果, 各酵母を用いて調製したドウでは, 動的粘弾性試験においてH試料は流れやすい性質を持ち, D試料は弾性要素に比べ粘性要素の寄与割合が高いことが示された. 発酵試験ではSのドウは砂糖添加の影響が大きく, Hは砂糖無添加試料の膨化がよかった. パンでは3試料の体積に差はなかったが, Hを用いて調製したパンは, やわらかく, 凝集性が低く, 官能評価では甘味があり, 香りおよび総合評価において好まれた. H製品に含まれている麹由来のアミラーゼ, プロテアーゼがパンの品質に影響を与えていることが推察された.

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© 2021 一般社団法人 日本家政学会
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