2021 年 72 巻 6 号 p. 333-347
本研究は, 時間的・経済的に困難を抱える母親に対する保育士の支援に関する実践的示唆を得ることを目的として, 一人で仕事と子育てを行うことを余儀なくされた, 乳児を育てる母親と保育士との「食事の連絡帳」でのやりとりを検討した. 本事例を検討した結果, 保育士は母親への助言内容や支援時期について, 母親の就労状況や保育所への信頼構築程度など様々な観点から配慮していることが明らかとなった. また, 保育士は子どもとかかわる時間を持ちにくい母親との連絡帳を通した毎日の情報交換により, 母親に子どもの成長・発達を伝えたり, 子育てに関する助言を保育士から母親へ押しつけにならないよう伝えることができていた. このような保護者支援が可能となったのは, 連絡帳での話題を毎日行われる食事に焦点を当てたことに起因していた. そして, 保育士がこのような食事の特性を生かしながら母親と連絡帳を通して毎日情報を交換することで, 長期的な視点での支援が可能となり, 食事を通して保育士と保護者が共に子どもを支援する関係を築きやすかったと考えられる.