2022 年 73 巻 11 号 p. 655-664
中国では, 子育て実践に影響を与える民衆意識型子ども観は変革途上にある. 本研究は, 無記名式自記式質問紙調査を通して, 中国大学生の子ども観を, 日本大学生と比較することによって明らかにする. 子ども観を探るために, 【肯定的意識】【共感的応答性】の尺度を使用する. また, これらに影響する要因として幼児の発達的知識に着目した. 有効分析対象は, 中国浙江省の公立大学と日本東京都の国立大学の大学生501名であった (中国N=316, 日本N=185名).
その結果, 中国大学生は日本大学生よりも【肯定的意識】【共感的応答性】が有意に低く, 幼児の発達的知識の正答率も低かった. 中国大学生については, 【肯定的意識】【共感的応答性】はきょうだいの有無や幼児との接触経験によって得点の有意差が見られた. そのほか, 中国大学生では幼児の発達的知識における「こころの発達」や「大人の役割」を理解する者は, それらを理解しない者よりも, 【共感的応答性】が有意に高かった.
調査結果から, 次世代育成を担う中国大学生は, 社会の中の子どもたちの存在と育ちに関心と理解が不足しているという実態が示されている. そのような実態は, 子ども観の課題として問い直す必要性を, 中国の社会的状況の変化から考察した.