2023 年 74 巻 4 号 p. 169-178
本研究では, 1. 保育観の違いへの対処と同僚を介した省察および職務満足感の関連, 2. 心理的安全性と保育観の違いへの対処の関連について検討した. 保育者を対象としたオンライン調査および質問紙調査を行ったところ, 142名分のデータが分析対象となった. 分析の結果, (1) 同僚間の保育観の違いはどの園においても起こり得ること, (2) 問題解決方略の使用が同僚を介した省察を促進し, 主張方略の使用が同僚を介した省察を抑制すること, (3) 問題解決方略の使用が職務満足感を高め, 回避方略の使用が職務満足感を低下させること, (4) 心理的安全性が問題解決方略の使用を促進し, 回避方略の使用を抑制すること, が示唆された. 以上のことから, 保育観の違いに対する問題解決方略の使用と保育現場における心理的安全性の重要性を論じた. 今後の課題として, 心理的安全性以外の問題解決方略の促進要因や心理的安全性を高める要因について明らかにすることを述べた.