2024 年 75 巻 1 号 p. 1-16
本論では, 困難家庭の支援に積極的に取り組んでいる保育所等へのインタビュー調査を通して, 困難家庭の子どもの育ちに対する積極的支援の方策と含意, 及びそれら実践の基盤となる要因を探り, 保育における福祉機能の可能性を考察した. 子どもの育ちへの積極的支援として, 子どもの保育の参加を確実にすること, 集団生活の中でも個別的なかかわりを充実させること, 困難家庭で不足しがちな経験を保育内容に盛り込むこと, 「特別扱い」による不要なスティグマを抱かないよう配慮することなどが抽出された. またそれらには, 子どもの生きる権利・育つ権利の保障, アタッチメントを土台とした発達保障, 日々の自己充実と将来の生活力の形成などの意味合いが込められていることも示された. それらを支える要因として, 子ども家庭支援を園の役割とする信念や組織基盤が示唆された. 福祉的な視点からすれば, 困難な状況にある子どもや家庭に手厚い支援を行うことは重要かつ必要なものであるが, それが新たなスティグマを生まないよう, 全体的な活動の中に, いかに受容的で個別的なかかわりを浸透させていくかを考慮に入れる必要性が示唆された.