日本家政学会誌
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1900年代のメゾン・ワレにおける服飾デザイン
新實 五穂
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2024 年 75 巻 3 号 p. 87-95

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抄録

 オートクチュールの創始者シャルル=フレデリック・ウォルトとともに, エミール・パンガは, 19世紀後期のフランスにおいて最も著名なデザイナーの一人である. パンガは, 裁断や縫製技術の高さに裏付けられた芸術的なデザインを生み出し, 優雅な外套を作り出すことに定評があったとされる. また彼は, 1860年代にルイ=ル=グラン通り30番地で創業した後, 1896年8月2日に「A. ワレ社」へメゾン (店舗) の経営権を譲渡したことが知られている.

 しかしながら, パンガの後継者A. ワレに関しては, 1880年代後期から90年代にかけて少女や子ども用衣類, 宮廷服を手掛けたという経歴が指摘されているものの, 1896年以降にメゾン・ワレがどのような活動を行い, いかなる服飾デザインを生み出していたかは明らかにされていない. ゆえに, 本論文では, 新聞『ル・フィガロ』や雑誌『レ・モード』などを用いて, メゾン・ワレにおける婦人服のデザインを具体的に分析し, その特徴に迫ることを目的とする.

 メゾン・ワレのデザインは, ワレの亡き後, ワレ夫人が1900年代にメゾンを若返らせるため, 伝統的な優雅さや豪華さを保ちながら, 素材とシルエットを生かす洗練されたシンプルさに重きを置いたことで評判を呼んだ. そして彼女の優雅さと洗練されたシンプルさが表現されたデザインの一例こそが, 着用場面を広げるテーラード・スーツや「テーラー風」と称される婦人服であった.

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