日本家政学会誌
Online ISSN : 1882-0352
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75 巻, 3 号
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報文
  • 新實 五穂
    2024 年 75 巻 3 号 p. 87-95
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/30
    ジャーナル フリー

     オートクチュールの創始者シャルル=フレデリック・ウォルトとともに, エミール・パンガは, 19世紀後期のフランスにおいて最も著名なデザイナーの一人である. パンガは, 裁断や縫製技術の高さに裏付けられた芸術的なデザインを生み出し, 優雅な外套を作り出すことに定評があったとされる. また彼は, 1860年代にルイ=ル=グラン通り30番地で創業した後, 1896年8月2日に「A. ワレ社」へメゾン (店舗) の経営権を譲渡したことが知られている.

     しかしながら, パンガの後継者A. ワレに関しては, 1880年代後期から90年代にかけて少女や子ども用衣類, 宮廷服を手掛けたという経歴が指摘されているものの, 1896年以降にメゾン・ワレがどのような活動を行い, いかなる服飾デザインを生み出していたかは明らかにされていない. ゆえに, 本論文では, 新聞『ル・フィガロ』や雑誌『レ・モード』などを用いて, メゾン・ワレにおける婦人服のデザインを具体的に分析し, その特徴に迫ることを目的とする.

     メゾン・ワレのデザインは, ワレの亡き後, ワレ夫人が1900年代にメゾンを若返らせるため, 伝統的な優雅さや豪華さを保ちながら, 素材とシルエットを生かす洗練されたシンプルさに重きを置いたことで評判を呼んだ. そして彼女の優雅さと洗練されたシンプルさが表現されたデザインの一例こそが, 着用場面を広げるテーラード・スーツや「テーラー風」と称される婦人服であった.

  • 川端 博子, 吉澤 知佐, 橋本 ひな子
    2024 年 75 巻 3 号 p. 96-107
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/30
    ジャーナル フリー

     若年女性が, 肌側面, ゲージ (GG), 繊維組成をコントロールした5種の夏用肌着シャツを手触りと着用で評価し, 快適な編地設計の要件について考察した. 併せて, 手触りと着用の評価の違いを編地の基本特性との関連から考察した.

     結果は以下のとおりである.

    1) 着用評価項目の因子分析より2因子構成となり, 「肌当たり」因子の寄与率は「温熱」因子より高いことから, 肌当たりが夏用肌着の好ましさにより大きく影響すると考えられる.

    2) 着用評価の結果より, 夏用肌着の快適性を向上させる編地の基本特性の要件として, 薄さ, 滑らかさと通気性の良さが挙げられた.

    3) 手触り評価は, 着用評価より「肌当たり」の違いを感度よくとらえ, 編地の基本特性との相関が高かった. 「温熱」に関しては, 手触り評価・着用評価ともに, 基本特性との相関が低く, 今回の試料の範囲では違いを感知するのは難しいことが明らかとなった.

資料
  • 押野 香, 駒場 千佳子, 小西 史子
    2024 年 75 巻 3 号 p. 108-118
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/30
    ジャーナル フリー

     研究の目的は, 管理栄養士或いは栄養士養成課程の女子大学生 (以下, 養成系女子学生とする) と非栄養士養成課程女子大学生および非栄養士養成課程の男子学生 (以下, 非養成系女子学生および非養成系男子学生とする) を対象に主食・主菜・副菜を組み合わせた食事 (健康的な食事) の頻度と, 食習慣および食事づくりに関わる事項 (調理頻度, 調理が好きおよび食事をととのえる力) との関連を検討することとした. 学生を健康的な食事の摂取頻度が高い群と低い群に分け, ロジスティック回帰分析を行った. その結果, 養成系女子学生, 非養成系女子学生および非養成系男子学生において, 朝食の摂取頻度が高い学生は, 健康的な食事の頻度のオッズ比が高かった. 健康的な食事の摂取頻度と調理頻度および調理が好きかどうかに関連はみられなかった. しかし, 養成系女子学生, 非養成系女子学生および非養成系男子学生において食事をととのえるときに, 栄養やタイミングを考えた料理の選択ができ, 食材に適した料理や調理法, 季節に合った料理, 調理に必要な食材や器具のイメージを描く力がある者は, 健康的な食事の頻度が高い可能性が示された.

  • ―戦後の学校教育への位置付け―
    佐藤 雅子, 綾部 園子
    2024 年 75 巻 3 号 p. 119-131
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/30
    ジャーナル フリー

     学校給食における偏食や好き嫌いについての指導において, 学習指導要領及び学校給食指導に関する手引書における記載内容を整理した. 好き嫌いなく食べるということの記載は「昭和27年版手引」以降, 文部科学省 (文部省) 発行の小学校指導書もしくは「手引」に記載され, 1992 (平成4) 年以降は栄養バランスよく食べることの指導が示されるようになった. これによって栄養バランスのよい食事が大事という知識が定着した. 一方, 偏食や好き嫌いについての指導は個別の相談指導の対象として強制指導にならないよう配慮すべき内容として示されていたが, 集団と個別の双方において栄養バランスよく食べる指導がされたことから, 好き嫌いせずに栄養バランスよく食べなければならないと児童が意識したことが推察された. 個別指導を学校体制として定期的, 継続的に行うとともに, 集団指導における「栄養バランスよく食べる」ことの指導を行うなかで嫌いな食べ物があるということを否定せず, 「好きな食べ物を増やす」という見方を取り入れ, 食の多様性を拡げていくことが, 今後の偏食及び好き嫌いの指導を容易にするのではないかと考える.

シリーズ くらしの最前線 143
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