2025 年 76 巻 10 号 p. 507-518
女子大学生を対象としてわさび4品種とチューブわさびの食べ比べによる官能評価を実施した. その結果, 分析型官能評価ではすりおろしわさびよりも, チューブわさびの方が辛味が有意に強く感じられることが明らかとなり, 嗜好型官能評価では, 好ましさの値がチューブわさびよりもすりおろしわさびで有意に高かった. また, 嗜好性を決定づける要因として, 香りの好みが, わさびの嗜好性に最も大きな影響を与えていることが明らかになった. 一方, 辛味評定平均値が高いわさびグループでは, 低いわさびグループに比べ, 甘味評定平均値が有意に低い結果となった. 辛味による甘味感受性に対するマスキング効果の存在が示唆され, さらなる検証が望まれる. 一方, 事前アンケートで辛さが苦手と回答した人は, 辛味の弱いわさびを好む傾向がみられた. 試験後の感想でも, わさびの品種による特徴の違いに言及した回答が多くみられ, 多様な嗜好性に応じた新たな品種改良や商品開発に向けた, わさび遺伝資源の活用が期待される. 持続可能なわさび生産と食文化継承の両立のためにも, すりおろしわさびの食経験を増やし, 消費者に向けた正しい情報発信が求められるだろう.