家政学雑誌
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乳幼児の集団保育に関する保母の意識
地域・経験・条件別にみた場合
猪野 郁子岩堂 美智子吉田 洋子
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1980 年 31 巻 2 号 p. 101-107

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抄録

乳幼児の集団保育のあり方を考える一つの基礎的資料を得るために, 大阪・島根両地区の保育所保母を対象にアンケート調査を実施したところ, 次のような結果がえられた.
1) 乳幼児をもつ母親の就労について, 大阪は就労を認める意見が多く, 母親は家庭にとする島根との間に有意な差異がみられた.また, 学生との間にも有意な差がみられた.
2) 働く母親のための社会制度として, 育児休職制度の拡大を望む者が8割みられた.産休の延長, 保育所の充実と労働時間の短縮の2項には半数以上の者が賛成し, とくに後者では学生との間に有意の差がみられた.
3) 保育に対する男女の役割について, 男性保育者の必要性を認める者はいずれの群にも多かった.
4) 0歳児の集団保育について, 大阪は集団保育の意義を認める者が多いのに対し, 島根はごく少数であり, 明らかな差異がみられた.
5) 現行保育所には, 「労働時間」「保育施設・環境」の点で問題が多いとする者が両地区の保母に多い.それについで, 大阪では「保育内容」島根では「受けもつ幼児数」であった.
6) 経験群と継続群は, 母親の就労を積極的に支持し, そのために, 保育所の充実と労働時間の短縮を望んでいた.
7) 継続群と有職群には, 0歳児保育の意義を認める者が多かった.
8) 経験群や良条件群では, 施設や保育条件よりも「保育内容」や「人間関係」を問題にしていた.
母親の就労いかんにかかわらず保育所のもつ役割は, 今後ますます重大になると考えられる.われわれは「保育所」の諸条件の改善をはかるとともに, 集団保育のあり方とは何か, を論じる必要があることを, 今回の結果をみて改めて痛感する次第である.

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