家政学雑誌
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卵黄の性状と組織
食塩と砂糖の影響
日比 喜子
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1980 年 31 巻 5 号 p. 381-386

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抄録
食塩と砂糖が生の全卵黄の凝固に及ぼす影響を知るため, 種々の濃度の溶液中に浸漬した全卵黄について, 物質の移動, 性状, 組織の変化を調べた. 結果を次に述べる.
1) 各浸漬液に全卵黄を浸漬すると, 卵黄膜を通して浸漬液と卵黄との間で, 水, 食塩, 砂糖の移動があった.
2) 浸漬7日後も浸漬前と同様流動状であったのは, 水, 0.9%および1%食塩水, 10%砂糖水浸漬卵黄で, ゲル状になったのは, 10%食塩水, 40%および飽和砂糖水浸漬卵黄であった. 破断強度は, 流動状の卵黄のうち, 0.9%食塩水浸漬卵黄が浸漬前のものと比べてほとんど変化がなかったが他は浸漬日数とともに低下した. 砂糖水浸漬卵黄のゲルは食塩水浸漬卵黄のゲルより非常にかたかった.
3) 組織構造は, 0.9%食塩水浸潰卵黄ではほとんど変化がなかったが, 水, 1%食塩水, 10%砂糖水浸漬卵黄は浸漬前の多面形顆粒構造がこわれ, 丸い卵黄球が散らばっていた. 10%食塩水浸漬卵黄では, 多面形顆粒の損傷が見られた. 40%砂糖水浸漬卵黄では比較的構造が保たれていたが, 飽和液になると構造はこわれていた.
4) 生の全卵黄の凝固は, 卵黄の性状, 組織構造の変化により, 食塩による場合はたん白質の変性のため, また, 砂糖による場合は卵黄からの脱水のために起こったことを示した.
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