家政学雑誌
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生分解に及ぼす撹拌および温度の影響
河川水中でのアニオン界面活性剤の生分解について (第 3 報)
阿部 幸子小林 泰子
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1985 年 36 巻 11 号 p. 874-879

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抄録
LAS, SDS, AOS, 石けんの河川水中での生分解性が, 酸素の供給状態や温度の変化により影響を受けるかどうかを明らかにするため, 多摩川の河川水を用いたダイ・アウェイ試験を行い, 撹拌と静置状態, 10℃と20℃とでの分解性の違いについて比較検討を行った.
撹拌操作により, 生分解速度は増加し, 供試界面活性剤はいずれも短時間でFRAS, TOCの消失を示し, とくに分解性の悪いLASの場合に顕著であった.しかも生分解の進行中にも, 空気中より酸素が十分に供給されるため, 水中の溶存酸素はやや過飽和状態にあることが認められた.
生分解に及ぼす温度の影響は撹拌の場合より大きく, 水温が低下するといずれの界面活性剤でも誘導期間が長くなり, 完全に消失するのにかなり長時間を必要とした.この現象はとくにLASの場合に顕著であり, TOC では50日後にも約60%が残存した.
これらの結果から, 河川より水流の弱い湖沼, 水温の低い冬期にはかなり多くの界面活性剤が未分解のまま水中に残存することが推測された.
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