日本家政学会誌
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『家政学雑誌』掲載報文の引用分析よりとらえた家政学の特質
佐藤 真弓
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1991 年 42 巻 11 号 p. 927-936

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抄録

以上, 『家政学雑誌』の1巻~40巻の掲載報文の引用文献について分析を行ったが, 本研究で得られたおもな知見は次のとおりである.
(1) 引用文献数および1報文あたり引用件数は経年的には増加していること, 雑誌引用と単行本引用では雑誌引用件数が多く, とくに和書雑誌引用件数が多いこと, 全引用件数における『家政学雑誌』引用件数の比率が年代的には漸減傾向にあること, 等の諸点については岡本らと同様の結果が得られた.
(2) 食物学において洋書雑誌引用の比率が比較的高く, 家族関係学において和書単行本, 大部分の領域で和書雑誌からの引用が多い.
(4) 引用文献雑誌のなかでは, 年次的にみても, 領域別にみても『家政学雑誌』が最も多い.上位10誌の全体に占める割合は漸増傾向を示す.また, 引用雑誌の種類は年代的に増えながらも, ある一定の主要雑誌に引用が集中する傾向がある.
(4) 洋書引用率は他雑誌と比較して非常に低いので, 外国への依存という点からみれば家政学の国際的独立性, 国際間の知識の交流という点からみれば孤立性が強いといえよう.
(5) 雑誌引用率 (全引用文献件数のうち雑誌を引用している比率) について, 図3に示す図書館・清報学における調査結果による科学分類により, 先行文献の比率と比較すると, 家政学全体は技術とほぼ同じ値を示し, 工学に近い値を示す.よって図書館・情報学における科学分類に従った場合, 家政学は技術・工学に似た科学的特質として考えられる応用科学的性格を有すると思われる.
(6) 雑誌引用率について内部領域をみると, 家政学原論は社会科学よりもさらに低い値を示し, 家族関係学はほぼ社会科学, 食物学, 被服学は技術, 自然科学の値に近い.その他の領域は自然科学と社会科学との中間に位置しているが, 工学に近い.
(7) 自誌引用率 (引用文献の雑誌件数のなかで, 『家政学雑誌』の論文を引用している比率) について, この比率が高いほど, プラス面として学問としての自律性, あるいはプラス・マイナス両面として自己依存性, マイナス面として孤立性, 閉鎖性が強いと考えると, 他雑誌と比較して『家政学雑誌』は自誌引用率が高く, これも家政学の特質であると考えられる.家政学原論, 家庭経営学・家庭管理学, 家庭経済学, 家政教育学の領域においてとくにこの傾向が強い.
以上, 本研究においては『家政学雑誌』の報文の引用分析を行い, 他雑誌と比較・検討することによって, 家政学の特質を考察した.このような『家政学雑誌』の報文の引用分析をはじめとして, 客観性・実証性をもつ科学的手法, たとえば, 学問の研究成果・業績に関する質的・量的分析といった科学社会学的手法, また, 学問を情報の一形態としてとらえ, 情報学的手法でを用いて学的特質を把握する, などのような科学的手法で, さらに家政学に関するさまざまな文献を分析することにより, 家政学の特質をつかむことができるのではないかと考える.

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