日本家政学会誌
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『家政学雑誌』における報文数および報文内容分析
佐藤 真弓
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キーワード: 家政学雑誌, 家政学, 報文, 知識
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1991 年 42 巻 11 号 p. 937-948

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抄録

本研究においては家政学を形作っているひとつひとつの新知識を, 『家政学雑誌』の報文を単位として量的側面でとらえた.そして報文数を分析することによって家政学の知識量の歴史的推移をとらえてきた.本研究で得られた知見は次のとおりである.
(1) 1951年~1989年の『家政学雑誌』に掲載された報文数は2,944編であり, 年次的に漸次増加傾向にあり知識量は増加している.1冊の『家政学雑誌』に掲載されている報文数は, 資料, ノート掲載数増加のためか, 減少傾向にある.雑誌は現在月刊誌となっているが, このペースを確立するまでには創刊以来約30年かかっている.
(2) 食物学, 被服学両領域で全体の報文数の80%以上を占める.食物学, 被服学領域の報文が量的に多いということは40年間全体を通じていえることである.また, とくに食物学の報文数は急激に増加しつつある.
(3) 研究方法別にみると実験的方法による報文数が約8割と圧倒的に多いが, これは自然科学の性格の強い食物学, 被服学両領域の報文数が多いためと思われる.
(4) 自然科学系の報文は図を多用し, 社会科学系の報文は表を多用し, 人文科学系の報文は図表を用いることが少ない.
(5) 領域間の知識量の勢力関係, 年代変化をとらえながら, 知識構造体を図示し, 検討した結果, 食物学, 被服学領域の知識量が家政学の知識量の大部分を占め, 量的意味において家政学全体に多大な影響を与えている現状が認められる.よって家政学という学問の統合性を高めるためにも, この両領域における研究者の家政学原論への関心がますます要請されるところである.
これから家政学の学問的発達に従って『家政学雑誌』が研究成果発表の場としてますます重要な役割を担うことになるであろう.また逆に『家政学雑誌』のあり方が家政学の発展に大きく影響していく場合も十分考えられるので, 今回の結果を家政学の現状として受け止めると同時に, 家政学の発展のために家政学の研究成果を反映すべく『家政学雑誌』のあり方を検討し, これからも家政学の研究成果を公表する場として有効に機能するようにしなければならないと考える.
今回は家政学で得られた知識が表れているものとして『家政学雑誌』の掲載報文を用い, 知識の量的側面のみについて分析を行った.家政学の体系化への第一歩として家政学の現状把握を行うための手段としては, このような実証的, 客観的な科学的方法は有効であると考える.しかし, 知識の質的側面についての分析もあわせて行っていくことが現状把握にとって不可欠であろう.また, 家政学の知識は『家政学雑誌』のほかにも, 著書や, 学会における研究発表, その他出版物にもあらわれているであろうが, 今後はその部分の調査も必要であろうと思われる.

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