日本家政学会誌
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包丁操作に関する筋電図学的分析
上野 ヨウコ桑本 千賀子山本 郁也
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キーワード: 包丁操作, 筋電図, 分析
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1991 年 42 巻 9 号 p. 775-781

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抄録

4種の包丁操作による筋電図を分析した結果, 次のような知見を得た.
(1) 包丁操作にかかわると思われる六つの筋の総活動量は, 包丁別では出刃包丁>薄刃包丁>文化包丁>鎌包丁の関係がみられ, 重量の重いもの, 刃型が片刃のもの, 刃角の大きいもの, 峰の厚いものにおける活動量が多い.握り方別では「親指のせ」が最小で, 「人差指のせ」と「親指握り込み」の間には大差がない.
(2) 筋別の活動量を包丁別にみると, 上腕は鎌包丁が最小で, 前腕は片刃の出刃と薄刃包丁が両刃の二つよりも多い.手掌も前腕と同様に片刃の出刃と薄刃包丁が両刃より多い.握り方別では, 上腕は「人差指のせ」, 前腕は「親指握り込み」, 手掌では「人差指のせ」, 「親指握り込み」がそれぞれ多い.
以上の結果から次のような示唆を得た.
(1) 包丁の選び方については, 今回使用した包丁のなかで活動量の少ないものすなわち軽いもの、両刃のもの, 刃角の小さいもの, 峰の薄いものが効果的である.
(2) 三つの握り方では, 「親指のせ」の活動量が4種の包丁とも少ない.華頂短期大学学生の調査結果では「親指のせ」は, わずかに20%にすぎなかったことと考え合わせて一考の必要がある.
(3) 上腕, 前腕, 手掌の筋のはたらきからは, 包丁の違い, 握り方の違いによるそれぞれの筋のかかわり方を知ることができる.

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