日本家政学会誌
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アレルギー患者が摂取可能なアマランサスパンの製造とその評価
新藤 由喜子青島 郁子飯田 文子満川 元行
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1992 年 43 巻 1 号 p. 15-21

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抄録

アレルギー患者に対してアレルゲンになる可能性が低く, かつおいしく食べられる食物を供給することは, 毎日の食事が治療と直結することであるので非常に重要なことである.そのため, アレルギー治療中に摂取可能なパンとして, 乳製品であるバター, スキムミルク, 大豆油を原料にしたショートニング, 卵を除いたパンの製造を試みた.従来のアレルギーパンでは多量の砂糖を使用しているが, 著者らは砂糖をまったく添加しないで, 日常め食生活で使用頻度の低い (=アレルゲンになる可能性の低い) アマランサスの種子を粉末にして小麦粉に混合した食パンの製造を行った.容積率ならびに官能検査の結果からアマランサスの配合を決定し, このパンをアレルギー患者に供与し, 内科的な診断ののちアレルギー治療中に摂取可能なパンとしての適否の検討を行った.
(1) アマランサスパンにおけるアマランサスの添加量は3, 10, 15, 20, 25, 30, 35, 40の割合 (%) で検討したが, アマランサス3%添加のものは対照の食パンの440より高い463という容積率であった.アマランサスの添加量が多くなるに従い容積率が低下したが, アマランサス添加量30%以下のものは, 容積率の良い基準とした250を上まわって, スポンジ性の良いパンが製造できた.
(2) 容積率の結果からアマランサス25, 30, 35%添加の3種のパンについて官能検査を行った.これによると25%添加のパンはすべての項目に対して非常に良い結果が得られたが, 30%添加のパンも「色, 香り, 口ざわり, 総合評価, アレルギー患者の常食として」の項目で3点以上の評点が得られ, アレルギー治療中に摂取可能なパンとして受け入れられると判断した. 35%添加のパンはアレルギー治療中に摂取可能なパンとしてふさわしくないと考察された.
(1) と (2) からアマランサス30%添加パンをアレルギー治療中に摂取可能なパンとした.
(3) アマランサス30%添加パンがアレルギー治療中に摂取可能なパンとして適していることを判定するため, アレルギー患者26人に供与し, 内科的臨床検査を行った.このパンの試食後, アレルギー専門医による診療の結果, このパンの試食によるアレルギー症状の増悪を示した被験者は皆無で, このアマランサスパンはアレルギー治療中に摂取可能なパンとして適することが明らかになった.
(4) アンケート方式によるアレルギー患者のアマランサス30%添加パン試食後の評価の総括では, 全体として良い評価をした人62%, 悪い評価をした人 23%, どちらともわからない人15%で, このアマランサス 30%添加パンがアレルギー治療中に摂取可能なパンとして十分受け入れられるという結果が得られた.

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