日本家政学会誌
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タンパク質含量の異なるパンのテクスチャーに対する脂質の影響
新原 立子
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1994 年 45 巻 10 号 p. 891-898

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抄録
小麦粉またはエーテル脱脂粉に小麦デンプンを混合することによりタンパク質含量の異なる粉を調製した.その際, デンプンに小麦粉の総脂質または結合脂質を添加して脂質には変動がないようにした.それらの小麦粉を用いて食パン生地の配合でパンを調製し, 小麦粉のエーテル可溶性脂質, ショートニング及び脂肪酸がパンの比容積及びテクスチャーに与える影響と小麦粉のタンパク質含量との関係をしらべ, 次のような結果を得た.
(1) コントロールの未脱脂粉の場合, タンパク質含量の増加にともない, パンの比容積が大きくなり, かたさは低下, 凝集性は上昇した.
(2) 小麦粉のエーテル可溶性脂質を完全に除くと, パンの比容積はタンパク質含量の多少にかかわらず著しく小さくなり, パンがかたくなって, タンパク質含量が多くなるにつれてかたさが増加した.凝集性は, タンパク質含量の少ない試料ではコントロールより大きく, タンパク質含量の多い試料では小さくなった.これらの変化は, エーテル可溶性脂質の約40%を再添加することにより一部回復した.
(3) ショートニングを添加しないで調製したパンは, 小麦粉脂質を除いた場合と同様な影響を受けたが, その影響は小麦粉の脱脂に比べて小さかった.また, 凝集性に対するショートニングの効果はほとんどみられなかった.
(4) 脂肪酸0.5%添加の影響は比較的小さかったが, タンパク質含量の多い試料において脂肪酸がパンのかたさを増大させる傾向がみられた.
(5) 以上の結果から, パンのテクスチャーに対するこれらの脂質の影響は, 主としてグルテンに対する作用に帰せられると結論した.
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