日本家政学会誌
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クッキーの膨化における小麦でんぷんの役割
倉賀野 妙子和田 淑子
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1994 年 45 巻 10 号 p. 899-907

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抄録
クッキーの膨化機序におけるプライムスターチとテーリングスターチ区分の作用特性の相違を明らかにするため, 小麦粉から分画して得た両区分のでんぷんを用いてクッキーを調製し検討した.
クッキーの膨化は, 焼成の初期にまずドウの横広がりが進行し, それに続いて垂直方向への厚さが増加することで成り立っている.クッキーの横広がりはプライムスターチ区分の特性に, 垂直方向への膨張はプライムスターチとテーリングスターチの両区分の特性による.プライムスターチ区分のドウでは, 焼成時温度上昇とともに砂糖の溶解が速やかに進行し, そのためドウが流動しやすく, クッキーの横広がりが生じる.横広がりは砂糖の添加量が多くなるほど顕著に増大し, 横広がりの形状になる上で砂糖が大きな役割を果たしていた.一方, テーリングスターチ区分のドウは焼成時の流動を起こし難いが, その原因として次の二つが示唆された.一つは, テーリングスターチ区分の吸水力が強く, そのため砂糖の溶解に必要な水分が速やかに供給されにくく, ドウの流動を引き起こし難くしていると考えられる.二つめは, テーリングスターチ区分にドウの流動を押さえる特性があると考えられる.テーリングスターチ区分のドウの加水量を増しても焼成時ほとんど流動が生じず, 内部組織にはタンパク質を主体とする物質が組織全体を被覆している状態が観察され, この物質がテーリングスターチクッキーの横広がりを抑制する因子となっていると推察された.
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