日本家政学会誌
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活動強度の低い日常生活時のエネルギー消費量の推定方法
福原 桂金子 佳代子
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1999 年 50 巻 7 号 p. 735-744

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抄録

活動強度の低い日常生活時のエネルギー消費量を簡便かつ精度よく推定する方法について検討するため, 無線式エネルギー代謝計測システムを用い, 女子大学生の日常生活時の酸素消費量と心拍数を午前11 : 00頃から午後7 : 00頃まで連続的に実測した.日常生活時の酸素消費量と心拍数の連続記録から, 活動強度の低い状態での両者の関係式 (L3) を作成し, それをもとに心拍数法によって推定した場合の総エネルギー消費量と, 臥位安静, 座位安静, 立位の時の酸素消費量の関係式 (L1) および強度の高い負荷運動 (踏台昇降) 時の酸素消費量と心拍数の関係式 (L2) をもとに, 心拍数法により推定した場合の総エネルギー消費量について, 実測した総エネルギー消費量との比較・検討を行った.被検者の日常生活の活動内容は1分ごとに記録し, 被検者には加速度計も装着してもらった。日常生活におけるエネルギー消費量の大部分は0.05 (kcal/kg/min) 以下であり, 本研究における被検者の日常生活の強度は低かった.L3を用いた心拍数法 (HRM 3) により推定した総エネルギー消費量は無線式エネルギー代謝計測システムにより実測した総エネルギー消費量に極めて近く, 両者間の相関係数は0.9998と非常に高かった.L2を用いた心拍数法 (HRM 1) およびL1とL2を用いた心拍数法 (HRM2) による総エネルギー消費量の推定値は, いずれも無線式エネルギー代謝計測システムによって実測した値を有意に上回り, その差はHRM 3の場合に比べて有意に大きかった.また, HRM 1, HRM 2による推定値と無線式エネルギー代謝計測システムによる実測値との相関係数は, HRM 3の場合よりも低かった.以上の結果から, 日常生活時のエネルギー消費量の推定には, 強度の低い日常生活活動時の酸素消費量と心拍数の関係をとらえることが重要であり, L3を用いることにより, 日常生活時のエネルギー消費量をより簡便かつ精度よく推定する方法の開発が可能であることが示唆された.

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