日本家政学会誌
Online ISSN : 1882-0352
Print ISSN : 0913-5227
ISSN-L : 0913-5227
パン酵母の発酵力における塩ストレスの影響
バグム ナズニーン横井川 久己男寺本 あい磯部 由香河合 弘康
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 50 巻 7 号 p. 729-733

詳細
抄録

塩化ナトリウムを含む数種の培地で増殖したパン酵母の発酵力を, 数種のタイプの生地中で評価した.3種類の増殖培地を実験に用いた.すなわち, YPG培地 (5%グルコース, 1%ペプトン, 0.5%酵母エキス, 0.1%リン酸-カリウム, 0.1%硫酸マグネシウム・7水塩, pH5.6), YPS倍地 (2%スクロース, 4%ペプトン, 2%酵母エキス, 0.2%リン酸-カリウム, 0.1%硫酸マグネシウム・7水塩pH5.6), MO培地 (1%尿素, 0.2%リン酸-カリウム, 5%糖蜜由来糖分, pH5.6) である.これらの培地への3%塩化ナトリウムの添加は, 増殖培地の種類にかかわらずパン酵母の増殖を明らかに抑制した (細胞収量は, 定常期において15~60%低下した).これらの塩ストレスにさらされた細胞の発酵力を調べたところ, 増殖培地や生地のタイプにかかわらず, 塩化ナトリウム非存在下で増殖した細胞より高い発酵力を示した.塩化ナトリウムの存在による発酵力の増加率は, 3%塩化ナトリウムを含むYPSまたはYPG培地と5%グルコースを含む生地を用いた場合が最大であった (45%の増加率).しかしながら, 発酵力の増加率は, 増殖培地の種類にかかわらず, 無糖生地では低いレベルに留まった (2~7%の増加率).酵母の発酵力は, 主に糖の取り込み速度によって制限されることから, 塩化ナトリウム存在下で増殖したパン酵母の高い発酵力は, 糖取り込み速度の増加によるものと推定される.また, 増殖培地中の塩化ナトリウムの存在は, 種々のサッカロミセス酵母の発酵力も高めた.

著者関連情報
© 社団法人日本家政学会
前の記事 次の記事
feedback
Top