総合健診
Online ISSN : 1884-4103
Print ISSN : 1347-0086
ISSN-L : 1347-0086
総合健診とアンチエイジング
抗加齢を目的とした総合健診・人間ドックの可能性
西崎 泰弘桑平 一郎谷野 隆三郎久保 明黒田 恵美子二郷 徳子鈴木 恵里子鈴木 智子藤田 昭平石 美和子末野 利治田中 誠一川田 浩志猪子 英俊石井 直明今井 裕
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 38 巻 2 号 p. 241-251

詳細
抄録

 抗加齢医学とは、老いに伴って問題(疾病)が発生する「傾向」を知り、積極的な介入を行って回避または軽減せしめることを目的とした医学である。疾病発生の準備状態と位置付けられる「病的老化」を照準として、理想的な生活習慣によってオプテイマルな状態を保ち、死に至らしめるリスクを遠ざけるのである。現在、本邦における予防医学は、現存する疾病の早期発見、早期治療に重点が置かれる「二次予防」が主であるが、抗加齢医学は「健康増進」を主軸とする「一次予防」の色合いが濃いのである。
 加齢による老化兆候や老化現象の早期発見と改善に照準を合わせた「抗加齢(アンチエイジング)ドック」は、2001年以降、都市部を中心に開設された。その検査項目は、現在の老化の度合いを知る「老化度」と、老化に影響を与える因子「老化危険因子」に大別される。前者は血管、ホルモン、神経、骨、筋肉(運動機能)が、また後者は代謝・糖化、生活習慣、酸化ストレス、身体ストレス、免疫がその主なものと考えられ、通常の人間ドックでは行われない数々の検査が実施される。
 抗加齢ドックの目的は、健康寿命の伸長であり、検査結果に基づいた適正な指導が行われてこそ初めて「抗加齢」が達成される。東海大学医学部付属東京病院では、抗加齢ドック開設4年半が過ぎ、のべ受診者は1000名を越えたが、指導後に複数の項目で加齢性変化が明らかに改善している。
 本邦は今後、超高齢化社会へと向かう。国民医療費の抑制、労働力と国内消費力の低下を抑止するためにも、「元気老人」を増やす「抗加齢ドック」の考え方自体は正しい方向性であろう。しかしながら、その先進性ゆえ、意義や効果が明らかでない事柄が先行しないよう注意が必要である。あくまで、健康寿命延伸を目標として、エビデンスに基づいて行われ、相反するエビデンスについては互いにdisclosureして論理的に評価し、受益者に十分な情報提供と選択肢を用意することが必要であろう。そして提供者は、自らの方向性が正しいかどうかを常に検証しながらが進んでゆく姿勢が必要と考えられる。

著者関連情報
© 2011 一般社団法人 日本総合健診医学会
前の記事
feedback
Top