総合健診
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38 巻 , 2 号
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特集
総合健診とアンチエイジング
  • 川北 哲也, 坪田 一男
    2011 年 38 巻 2 号 p. 212-222
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/08/01
    ジャーナル フリー
     抗加齢医学(アンチエイジング医学)とは、加齢という生物学的プロセスに介入を行い、加齢に伴う動脈硬化や、がんのような加齢関連疾患の発症確率を下げ、健康長寿をめざす医学である。アンチエイジング医学が注目されてきた背景には、老化研究が進んだことにより老化が科学的に解明されはじめたことによる。
     老化は避けられないものではなく、細胞生物学的なプロセスのひとつとであり、介入することにより遅らせることができる可能性があることがわかってきた。1980 年代までは、加齢のプロセスは非常に複雑で、とても介入など不可能であると考えられていた。現在でも加齢のメカニズムに関してはさまざまな説があるが、次第に研究や情報の整理により、徐々に加齢のメインメカニズムが解明されてきている。
     現時点においては、酸化ストレスが老化のメカニズムに関わり、カロリーリストリクションにより介入できることは老化のサイエンスとして認識されてきている。
     ヒトにおいては、カロリーリストリクションが寿命を延長するという確実なエビデンスはいまだ存在しないが、最近では、長寿の代謝マーカーとして低体温、低インシュリン血症、高DHEA-s 血症が、カロリーリストリクションをしたサルに認められたことが報告された。1)このカロリーリストリクションによる寿命延長には、Sir2/SirT1 というNAD 依存症ヒストン脱アセチル化酵素が重要な役割を果たしていることが明らかになってきた。運動に関しても、自発的な運動をさせたラットで約10%の寿命延長が観察されている。これらは、食事制限や適度な運動によって、老化過程で認められる動脈硬化などの病的現象が抑制される可能性を示している。
     食事制限や適度な運動といった生活習慣の改善はヒトにおいても寿命を延長し、また健康にとってプラスになることが示唆されている。今後も老化に関するメカニズムが少しずつ明らかになり、ヒトの健康寿命の延長に貢献し、日本が健康大国となることを願ってやまない。
  • 石井 直明
    2011 年 38 巻 2 号 p. 223-231
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/08/01
    ジャーナル フリー
     老化は遺伝子と環境因子により複雑に制御されている。そのため多くの老化の説が考えられてきた。その中で、エネルギー代謝とその副産物である活性酸素が老化と深く関わっていることが明らかになってきた。活性酸素が細胞構成成分に傷害を与えて、細胞障害を起こし、組織・器官が機能低下することで個体老化が促進する。これに対して生物は抗酸化機構を発達させてきた。生物の個々の寿命は活性酸素の発生量とこれに対する防御能力のバランスにより決定されていると考えられるようになってきた。この老化のメカニズムは多くの生物で共通に見出され、ヒトの正常老化や老年性疾患にも深く関与している。エネルギー代謝に関連したカロリー制限や抗酸化の研究は抗加齢の可能性を示唆したことから、一般社会からも大きな注目を集めるようになってきた。しかし、それはまだ実験動物レベルの段階であり、ヒトで実証する必要がある。
     65歳の日本人女性の平均寿命は88歳に達しており、病的老化である「ガン」「脳血管障害」「心臓血管障害」の三大疾患が克服されると95歳近くまで平均寿命が延長すると言われている。それでもヒトの最長寿命である120歳には及ばないことから、そこに存在する生理的老化のメカニズムを明らかにする必要がある。抗酸化剤やカロリー制限が病的老化と生理学的老化のどちらに関与しているのかをヒトで明らかにし、病的老化の克服はもちろん、生理学的老化(生物学的老化)の制御を目指すことが、真の「抗加齢研究」であると考える。
  • 久保 明
    2011 年 38 巻 2 号 p. 232-240
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/08/01
    ジャーナル フリー
     臨床医学としての抗加齢医学は科学としては確立過程にあり、疫学的検証はこれからの課題である。
     2001年から高輪メディカルクリニックでは「健康寿命ドック」、2006年から東海大学東京病院で「抗加齢ドック」を実施し、2,500名に及ぶ日本人のエイジングに関するデータベースが蓄積されつつある。今後は横断研究のみならずMORGAM研究のようなフォローアップ研究、もしくは様々な介入研究の実践がもとめられる。
     加齢の臨床医学的メカニズムはテロメアやサーチュインなどの病態研究と併行しながら解明が進み、酸化・糖化(AGEs)、メタボリックシンドロームやホルモンの関与が明らかにされた。これらの研究を抗加齢医学として活かすには得られた知見をヒトに適応させ、疾患発症や死亡率の減少、またはQOLの改善などの結果を得なければならない。
     これら抗加齢医学アプローチとしては摂取カロリー減少、身体活動、サプリメントなどがあげられる。身体活動のエイジングに及ぼす効果は幅広く研究されており、臨床現場においても姿勢と日常動作に主眼をおいた指導を行なっている。サプリメント(主としてビタミン)に関しては近年薬物と同じ手法でその効果検証が行われるようになり、個人差が軽視される傾向がある。
     今後は医療施設のみならず、大学・企業などを含めた幅広い連携によって個人個人のQOLを改善する真の予防医療としての抗加齢医学・医療実現が望まれ、総合健診の果たす役割は大きい。
  • 西崎 泰弘, 桑平 一郎, 谷野 隆三郎, 久保 明, 黒田 恵美子, 二郷 徳子, 鈴木 恵里子, 鈴木 智子, 藤田 昭, 平石 美和子 ...
    2011 年 38 巻 2 号 p. 241-251
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/08/01
    ジャーナル フリー
     抗加齢医学とは、老いに伴って問題(疾病)が発生する「傾向」を知り、積極的な介入を行って回避または軽減せしめることを目的とした医学である。疾病発生の準備状態と位置付けられる「病的老化」を照準として、理想的な生活習慣によってオプテイマルな状態を保ち、死に至らしめるリスクを遠ざけるのである。現在、本邦における予防医学は、現存する疾病の早期発見、早期治療に重点が置かれる「二次予防」が主であるが、抗加齢医学は「健康増進」を主軸とする「一次予防」の色合いが濃いのである。
     加齢による老化兆候や老化現象の早期発見と改善に照準を合わせた「抗加齢(アンチエイジング)ドック」は、2001年以降、都市部を中心に開設された。その検査項目は、現在の老化の度合いを知る「老化度」と、老化に影響を与える因子「老化危険因子」に大別される。前者は血管、ホルモン、神経、骨、筋肉(運動機能)が、また後者は代謝・糖化、生活習慣、酸化ストレス、身体ストレス、免疫がその主なものと考えられ、通常の人間ドックでは行われない数々の検査が実施される。
     抗加齢ドックの目的は、健康寿命の伸長であり、検査結果に基づいた適正な指導が行われてこそ初めて「抗加齢」が達成される。東海大学医学部付属東京病院では、抗加齢ドック開設4年半が過ぎ、のべ受診者は1000名を越えたが、指導後に複数の項目で加齢性変化が明らかに改善している。
     本邦は今後、超高齢化社会へと向かう。国民医療費の抑制、労働力と国内消費力の低下を抑止するためにも、「元気老人」を増やす「抗加齢ドック」の考え方自体は正しい方向性であろう。しかしながら、その先進性ゆえ、意義や効果が明らかでない事柄が先行しないよう注意が必要である。あくまで、健康寿命延伸を目標として、エビデンスに基づいて行われ、相反するエビデンスについては互いにdisclosureして論理的に評価し、受益者に十分な情報提供と選択肢を用意することが必要であろう。そして提供者は、自らの方向性が正しいかどうかを常に検証しながらが進んでゆく姿勢が必要と考えられる。
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