総合健診
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原著
親子の愛着関係と青年期における気分状態・心身状態との関連性
澤村 貫太岡本 永佳浅川 徹也水野(松本) 由子
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2013 年 40 巻 2 号 p. 253-258

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抄録

 幼少期の親子関係において良好な関係を築けなかった人は、青年期において人間関係構築の困難や精神疾患を引き起こす可能性が示唆される。そこで、健常成人87名を対象に内的作業モデル尺度(Internal Working Model: IWM)、気分プロフィール検査(Profile of Mood States: POMS)とCornell Medical Index(CMI)を用いて、青年期の親子関係と気分状態・心身状態を調べることを目的とした。IWMを用いて安定型、回避型、アンビバレント型の得点を被検者ごとに求めた。さらに、各被検者の得点のうち最も高値を示した型に基づいて、被検者を安定群、回避群、アンビバレント群に分類した。3群におけるIWMとPOMS、CMIの関連を統計的に比較した。IWMとPOMSを比較した結果、安定群は気分状態が安定していた。アンビバレント群はネガティブな気分状態が高値を示した。回避群では有意な特徴はみられなかった。IWMとCMIを比較した結果、安定群の心身状態は健康であった。回避群は身体的自覚症が高値を示した。アンビバレント群は精神的自覚症が高値を示した。今回の結果より、安定群はストレスに対する抵抗性が高く情緒的に安定していると考えられた。回避群は心理的苦痛を身体症状に転換し逃避するために、身体的自覚症状が顕著にみられると考えられた。アンビバレント群は自己不全感が強く、愛着反応に対して強いストレスを感じており、ストレスに対する脆弱性が高くなることで精神的自覚症が顕著にみられたと考えられた。これらのことより、親子関係と青年期の気分状態や心身状態が関連していることが示された。青年期における不適切な愛着関係を早期発見、修正することで精神疾患を予防することができることが示唆された。

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© 2013 一般社団法人 日本総合健診医学会
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