2014 年 41 巻 3 号 p. 444-450
オーストラリアのWarrenとMarshallによるH. pylori(ピロリ菌)の発見で、胃・十二指腸疾患の自然史上、極めて大きなブレークスルーが起こった。今や、ピロリ菌除菌で慢性胃炎や消化性潰瘍を治療するだけでなく、胃がんの予防にまで言及されるようになった。過去40年以上にわたり、我が国では国民病ともいわれる「胃がん」に対する検診が行われてきたが、この「胃がん検診」についてもピロリ菌を制御するという局面からの新規アプローチの必要に迫られている。ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎に対する除菌療法が、2013年2月から健康保険の適用となり、まさに国民総除菌時代を迎え、年間100万人規模の除菌療法が開始されており、数十年後に、胃がんを撲滅するために、よりきめ細かい診療がもとめられている。本稿では、ピロリ菌感染症の病態、胃がん検診、除菌療法について最新の知見をまとめたい。