抄録
遺伝子診断の方法としてサンガー法を用いた塩基配列決定法が長らく主流を占めているが、近年では、次世代シークエンサーが登場し、それを用いた解析が臨床現場に導入されようとしている。しかし遺伝病の予期せぬ原因遺伝子変異・多型が発見される(incidental findings)など倫理的・技術的な問題が解決しているわけではない。また見出したvariant(多様体)が疾患の原因(変異)になるのか、単なる個人差(多型)になるのかの判断は一筋縄ではいかない。本講演では健診を含めた医療として遺伝子診断を推し進めていくために必要な「分析の質の担保」(質保証)について、国際的なvariants表記法のHuman Genome Variation Society: HGVSの記載法、全国遺伝子医療部門連絡会議での現状、日本遺伝子診療学会が新たに立ち上げる認定資格ジェネティックエキスパートなどを紹介しながら、言葉、保険診療、費用、労力、人材育成など様々な面から考察する。