労働安全衛生法の改正(平成26年6月25日公布、平成27年12月1日施行)により、「心理的な負担の程度を把握するための検査」(ストレスチェック)の実施が事業者に義務づけられた。これにより、労働者は年に1回以上のストレスチェックを受検することとなった。ストレスチェックはうつ病等の精神疾患のスクリーニング検査ではなく、自らのストレスの状況についての気づきを促し、個人のメンタルヘルス不調のリスクを低減させる(個別対応)とともに、検査結果を集団的に分析し、職場におけるストレス要因を評価し、職場環境の改善につなげる(集団分析)ことで、リスクの要因そのものも低減させるといった1次予防が主な目的とされている。
従来行われてきた職場のメンタルヘルス対策は、2次予防・3次予防が中心であり、職場側の仕組みづくりと不調者への対応といったリスクマネジメントとしての側面が強く現れていた。一方で、今回創設されたストレスチェック制度は、従来の対策とは異なった1次予防であるという認識をもつことが重要となる。
また、近年、労働者のメンタルヘルス不全の増加と職場における人材育成の機能の弱体化との関連性も指摘されている。
これら職場における人材にまつわる問題を、経営資源のひとつである人材の問題と包括的に捉え直し、対策を検討していくことの重要性も示唆され始めている。
そのため、ストレスチェックを単にメンタルヘルス対策の一環と位置づけてしまうのか、それとも違った視点からストレスチェックの機会を有効活用していくのかによっても、その効果は大きく異なることが予想される。労働衛生管理だけに留まらず、職場内の人的資源管理とも連携を図り、各事業場において実効性のあるストレスチェックへとカスタマイズしていくことが今後求められるだろう。