総合健診
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42 巻 , 5 号
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原著
  • 宮内 義明, 西村 治彦, 稲田 紘
    2015 年 42 巻 5 号 p. 479-491
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/01
    ジャーナル オープンアクセス
     メタボリック症候群に焦点を当てる特定健診では、受診者の健康状態を示す客観的な検査データと、生活習慣を回答する主観性を含む問診データの両者を結びつけて状況を把握することが求められる。そのための新手法として著者らはベイジアンネットワークによる特定健診評価システムの構築に取り組んできた。本研究では、特定健診導入以前の保健指導の影響下にない健診データを分析することで、介入の無い通常の経過での支援レベル間の移動率を得ることができた。これを考慮に入れることで、保健指導レベルの改善状況に対して実質効果を算出できた。これは、特定保健指導のより的確な評価につながるものと考える。次に健診判定基準値による検査データの2値化と、論理和のビット表現で作られる検査16状態を提案し、その有用性を確認した。階層化による支援レベルに対して、体型、血糖、脂質、血圧の各因子を対等に扱う検査16状態を相補的に用いることで、より充実した保健指導につながることが期待される。更に、これらを特定健診のためのベイジアンネットワークに反映させ、経年の問診データと検査データの組み合わせにより、生活習慣が健康状態に影響を与えるまでの時間差について評価を行った。その結果、問診データと検査データの因果関係をより良く反映しているのは越年データセットであった。これは、問診データが表す生活習慣の影響が検査データに示される健康状態に現れるまでに1年程度の遅れがあることを示しており、保健指導での過去に遡った生活習慣の把握の重要さが示唆された。また、受診者事例を用いた検討では、保健指導の場で指導者と受診者が共にベイジアンネットワークを用いて生活習慣の改善を目指せることを示した。以上の検討を通して、特定健診のためのベイジアンネットワークが保健指導サポートツールへと発展する可能性を示した。
  • 松下 瑞季, 渡辺 あすは, 草薙 千晶, 君塚 郁代, 坂本 和代, 小泉 周子, 村上 雅美, 東野 紀子, 竹澤 三代子, 岡田 純, ...
    2015 年 42 巻 5 号 p. 492-499
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/01
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】心疾患は、日本人の死亡原因の第二位である。また、突然死の原因は心疾患が最も多く、中でも虚血性心疾患が多数を占める。心臓超音波検査(心エコー検査)は非侵襲的であり、簡便に、短時間で行えるため受診者の負担も少なく、利便性が高い。そこで、人間ドックのオプション検査である心エコー検査について新たな取り組みを開始し、検査件数増加や診断精度の向上につながるか検討した。
    【対象・方法】2013年4月から2014年12月までのドック受診者2,666名を対象とした。従来、心エコー検査は、受診者が希望する場合のみ行っていた(以下希望群)。2013年度からの取り組みとして、希望群に加え、診察時の心雑音聴取、心電図や胸部X線などの所見より、医師が心エコー検査の必要性ありと判断した場合、受診者に検査を推奨、希望された場合に施行した(以下追加群)。また、検査の報告書には実施理由を明記した。
    【結果】ドック受診者の心エコー検査割合は、2010~2012年度は全受診者数の8~9%と横ばいであったが、2013年4月~2014年12月は12.8%と増加した。心エコー検査を受けた341名の内訳は、希望群256名、追加群85名であった。追加群の理由で最も多かったのは心雑音で60.0%であった。要精密検査・要治療判定率は、追加群は21.2%で、希望群の8.6%より高率であった。要精密検査判定では、大動脈弁閉鎖不全症が最も多くみられた。追加群では左房粘液腫も発見された。要精密検査・要治療判定となった受診者の精密検査受診率は、希望群63.6%、追加群55.6%であった。
    【結語】心エコー検査に対する新たな取り組みを行った結果、検査件数の増加が見られ、より緊急性の高い症例も発見された。綿密な診察および検査体制を整備することは、受診者利益につながると考える。
大会講演
日本総合健診医学会 第43回大会
  • 日野原 重明
    2015 年 42 巻 5 号 p. 500-506
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/01
    ジャーナル オープンアクセス
  • 増田 和茂
    2015 年 42 巻 5 号 p. 507-512
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/01
    ジャーナル オープンアクセス
     将来とも我国の社会保障制度の持続性を確立することは日本が直面している喫緊の課題の1つである。他に類をみない速さで少子高齢化が進展し、医療・年金・福祉など社会保障給付費関連の財政負担が増大し続けている中、2012年(平成24年)2月の閣議決定「社会保障・税一体改革大綱」を経て、同年8月には社会保障費の財源に充てるための所費税率アップを含めた社会保障制度改革関連法案が可決された。
     翌年、2013年(平成25年)6月、政府は「日本再興戦略」1)を発表し、我国経済の再興を可能とする戦略的市場の主要テーマの一つに「国民の健康寿命の延伸」に寄与する健康寿命延伸産業の育成を掲げ、効果的な予防サービスや健康管理の充実により、健やかに生活し、老いることができる「健康長寿社会」の実現を目指すことを明記した。さらには、健康長寿社会の実現のためにデータヘルス計画にも言及し、レセプト・健診等のデータの分析、それに基づく健康保持増進のための事業等、効果的な予防サービスや健康管理を充実させることの重要性も強調している。
     日本総合健診医学会前理事長日野原重明氏は理事長当時の学会ホームページのご挨拶の中で「厳正な精度管理のもとに全国の総合健診施設に管理されている継続データは、国民の皆さまの「生涯健康管理」と「一次予防」のお役に立つものと確信しております」と述べられている。これはまさしくデータヘルス計画の一翼を総合健診施設が担うことになると言う期待を述べられているのではないでしょうか。高齢者医療のための過重な拠出金負担による財政的圧迫という理由からやむなく職員を削減せざるを得ない健康保険組合も少なくない中、データヘルス計画の事業の一部または全部を外部に委託せざるを得ない医療保険者も多く、健診・保健指導の分野で実績のある総合健診施設が果たす役割が大きく期待されていると思われる。
  • 梅田 忠敬
    2015 年 42 巻 5 号 p. 513-521
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/01
    ジャーナル オープンアクセス
     労働安全衛生法の改正(平成26年6月25日公布、平成27年12月1日施行)により、「心理的な負担の程度を把握するための検査」(ストレスチェック)の実施が事業者に義務づけられた。これにより、労働者は年に1回以上のストレスチェックを受検することとなった。ストレスチェックはうつ病等の精神疾患のスクリーニング検査ではなく、自らのストレスの状況についての気づきを促し、個人のメンタルヘルス不調のリスクを低減させる(個別対応)とともに、検査結果を集団的に分析し、職場におけるストレス要因を評価し、職場環境の改善につなげる(集団分析)ことで、リスクの要因そのものも低減させるといった1次予防が主な目的とされている。
     従来行われてきた職場のメンタルヘルス対策は、2次予防・3次予防が中心であり、職場側の仕組みづくりと不調者への対応といったリスクマネジメントとしての側面が強く現れていた。一方で、今回創設されたストレスチェック制度は、従来の対策とは異なった1次予防であるという認識をもつことが重要となる。
     また、近年、労働者のメンタルヘルス不全の増加と職場における人材育成の機能の弱体化との関連性も指摘されている。
     これら職場における人材にまつわる問題を、経営資源のひとつである人材の問題と包括的に捉え直し、対策を検討していくことの重要性も示唆され始めている。
     そのため、ストレスチェックを単にメンタルヘルス対策の一環と位置づけてしまうのか、それとも違った視点からストレスチェックの機会を有効活用していくのかによっても、その効果は大きく異なることが予想される。労働衛生管理だけに留まらず、職場内の人的資源管理とも連携を図り、各事業場において実効性のあるストレスチェックへとカスタマイズしていくことが今後求められるだろう。
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