総合健診
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メンタルヘルスとストレスチェック
働き盛り世代のメンタルヘルスの現状と課題
廣 尚典
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ジャーナル オープンアクセス

2016 年 43 巻 2 号 p. 304-312

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抄録

 労働者のメンタルヘルス対策の推進は、我が国の産業保健によって、重要課題のひとつとなっている。メンタルヘルス不調を有する労働者数が高止まって減少傾向に転じないことに加え、以前にはあまりみられなかった病像をもつ不調例や、職場環境が厳しくなる中で顕在化してきた不調例の増加が、職場関係者を悩ませている。1998年より年間3万人を超えていた自殺者の総数は、それ以前の水準に復する動きがあるが、労働者に限っては、減少傾向こそ認めるものの、まだ高値を続けている。精神障害の労災認定事例も急増している。仕事や職業生活に関して強いストレスを有する労働者の割合も高い。労働者のメンタルヘルスに影響を与える仕事関連要因としては、長時間労働の他に、仕事の質・量の大きな変化とハラスメントが、特に注目される。非正規労働者のメンタルヘルスに関する問題もよく議論の俎上に上がるようになっているが、具体的な対策を講じるためには、多面的な検討が不足しているのが現状である。こうした状況下で、行政からも、メンタルヘルス指針をはじめ、職場復帰支援の手引き、過重労働対策の進め方などが示されている。2015年からは、新たにストレスチェック制度も開始された。今後のこの領域の課題としては、職場環境の改善、職場と主治医との連携強化、症状や内服薬の影響に応じた適切な就業制限、ポジティブメンタルヘルスの視点の検討、障害者雇用の推進などがあげられる。

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© 2016 一般社団法人 日本総合健診医学会
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