総合健診
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43 巻, 2 号
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特集
メンタルヘルスとストレスチェック
  • 厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課産業保健支援室
    2016 年 43 巻 2 号 p. 299-303
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     平成26年6月の労働安全衛生法の改正に伴い、昨年12月1日より、新たにストレスチェック制度が施行された。
     今回は、ストレスチェック制度及び実施にあたっての重要な留意点等について、概説する。

    <ストレスチェック制度の概要>
    【ストレスチェック】労働者の心理的な負担の程度を把握するため、常時使用する労働者に対して、医師、保健師等による心理的な負担を把握するための検査(ストレスチェック)を実施することが事業者の義務となった。ただし、従業員数50人未満の事業場については当分の間、努力義務。
    【面接指導】ストレスチェックの結果、高ストレスであり面接指導の必要があると認められた労働者の申出に基づき医師による面接指導を実施することが事業者の義務となった。さらに事業者は、面接指導の結果に基づき、医師の意見を聴いた上で、必要な場合には、作業の転換、労働時間の短縮その他の適切な就業上の措置を講じることも義務である。
    【集団分析】事業者は、ストレスチェックの結果を一定規模の集団ごとに集計・分析させ、その結果、必要な場合は適切な措置を講じる(努力義務)。
    ※本人の同意がない限り、個人の結果は事業者に提供されることはない仕組みであり、また、面接指導の申し出や、面接指導の結果等により、不利益な取扱いがなされることも禁止されている。
  • 廣 尚典
    2016 年 43 巻 2 号 p. 304-312
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     労働者のメンタルヘルス対策の推進は、我が国の産業保健によって、重要課題のひとつとなっている。メンタルヘルス不調を有する労働者数が高止まって減少傾向に転じないことに加え、以前にはあまりみられなかった病像をもつ不調例や、職場環境が厳しくなる中で顕在化してきた不調例の増加が、職場関係者を悩ませている。1998年より年間3万人を超えていた自殺者の総数は、それ以前の水準に復する動きがあるが、労働者に限っては、減少傾向こそ認めるものの、まだ高値を続けている。精神障害の労災認定事例も急増している。仕事や職業生活に関して強いストレスを有する労働者の割合も高い。労働者のメンタルヘルスに影響を与える仕事関連要因としては、長時間労働の他に、仕事の質・量の大きな変化とハラスメントが、特に注目される。非正規労働者のメンタルヘルスに関する問題もよく議論の俎上に上がるようになっているが、具体的な対策を講じるためには、多面的な検討が不足しているのが現状である。こうした状況下で、行政からも、メンタルヘルス指針をはじめ、職場復帰支援の手引き、過重労働対策の進め方などが示されている。2015年からは、新たにストレスチェック制度も開始された。今後のこの領域の課題としては、職場環境の改善、職場と主治医との連携強化、症状や内服薬の影響に応じた適切な就業制限、ポジティブメンタルヘルスの視点の検討、障害者雇用の推進などがあげられる。
  • 堤 明純
    2016 年 43 巻 2 号 p. 313-319
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     職場におけるメンタルヘルス不調のスクリーニングについては、スクリーニング効率がさほど高くないこと、スクリーニングの有効性を示すエビデンスが乏しいことに留意する必要がある。調査対象のセグメンテーションや層別尤度比の活用は、こういった課題解決のキーとなりうる。職場におけるスクリーニングの対象となる障害としては、頻度が多く、適切なケアによる対策の効果が、障害を有するケースと職場ともに認められているうつ病性障害の優先順位が高いが、最近は自閉症スペクトラム障害や適応障害なども注目されている。自閉症スペクトラム障害は、以前考えられていたよりも頻度が多く、職場不適応や難治性うつ病のハイリスク要因として認識されるようになっている。適応障害も長期の疾病休業の原因として職場でよく遭遇する、職業性要素の強いメンタルヘルス不調の一つである。適切な職場環境の調整により、不必要な休業や障害が取り除かれる可能性があり、スクリーニングを実施する価値がある。職場においては、層別尤度比などの検査特性を検討している研究は少なく、対象となる障害とともに、いかに実施すると効率的なスクリーニングができるかを含めた方法論に関する検証の蓄積が望まれる。
  • 島津 明人
    2016 年 43 巻 2 号 p. 320-325
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     本論文は、近年、新しく紹介されたワーク・エンゲイジメント(仕事に関して肯定的で充実した感情および態度)について概観したものである。最初に、エンゲイジメントが、活力、熱意、没頭から構成される概念であることを定義したうえで、先行要因と結果要因について言及した。すなわち、ワーク・エンゲイジメントは、仕事の資源(自律性、上司のコーチング、パフォーマンスのフィードバックなど)や個人の資源(楽観性、自己効力感、自尊心など)によって予測されるとともに、心身の健康、組織行動、パフォーマンスを予測することができる。次に、ワーク・エンゲイジメントに注目した組織と個人の活性化の方策について言及した。最後に、組織の活性化に向けたストレスチェック制度の戦略的活用について言及した。
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