総合健診
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原著
飲酒習慣のある男性喫煙者における飲酒量、喫煙本数、運動習慣がHDLコレステロールに与える影響
菊地 恵観子小田 夏奈江千 哲三川久保 清
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2016 年 43 巻 3 号 p. 429-436

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抄録

 動脈硬化性疾患の発症は、HDLコレステロール(HDL-C)の低値が関与していると報告されており、HDL-Cの適正化が求められている。HDL-Cは、喫煙、体重増加により減少すること、飲酒、運動により増加することが報告されている。このようにHDL-Cは、様々な生活習慣により変動することがわかっているが、相互の生活習慣とHDL-Cとの関係性はよく分かっていない。
 本研究では、HDL-Cと生活習慣の相互の関係性に着目し、健診を受診した男性飲酒者4,668名(喫煙群2,648名、非喫煙群2,020名)を対象として、飲酒習慣(毎日飲酒あり)のある男性における飲酒量、喫煙本数、運動習慣がHDLコレステロールに与える影響を検討した。飲酒量は、毎日飲む量(合換算)にて4群にカテゴリ化し、運動習慣は運動の有無による2値とした。
 喫煙群と非喫煙群の比較では、非喫煙群の方がHDL-C、BMIが高く、運動習慣は多く、飲酒量は少なかった。従属変数にHDL-C、独立変数に年齢、BMI、飲酒量、運動習慣の有無、1日の喫煙本数(喫煙群のみ)として強制投入法による重回帰分析を喫煙群、非喫煙群別に行った。喫煙群では、飲酒量(β=0.175、p<0.001)、運動習慣(β=0.041、p=0.023)はHDL-Cと正の相関を示し、BMI(β=-0.348、p<0.001)、たばこの本数(β=-0.079、p<0.001)は負の相関を示した。非喫煙群では、飲酒量(β=0.212、p<0.001)、運動習慣(β=0.073、p<0.001)は正の相関を示し、BMI(β=-0.375、p<0.001)は負の相関を示した。両群ともに、年齢とHDL-Cには有意な相関は認められなかった(p=0.560)。
 喫煙群および非喫煙群ともに、飲酒や運動によるHDL-C高値への影響が認められたが、BMI高値によるHDL-C低値への影響が最も大きかった。また、喫煙群では、喫煙本数が多いとHDL-Cは低値を示していた。

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© 2016 一般社団法人 日本総合健診医学会
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