総合健診
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43 巻 , 3 号
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原著
  • 山口 孝子, 松林 重幸, 小出 靖, 森近 俊彦, 大川 智久, 竹内 陽子, 高野 友爾, 長尾 由紀, 久安 利枝, 折坂 智恵子, ...
    2016 年 43 巻 3 号 p. 419-428
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
     2006年4月から2013年3月までの7年間に当協会で実施した職域乳がん検診結果をまとめ、受診率に影響している要因について検討した。7年間の受診者は延べ27,750人で、視触診併用マンモグラフィ(以下MMG)が72.4%、MMG単独20.4%、視触診単独7.2%であった。7年間で41人の乳がんが見つかったが、全員MMG受診者だった。MMG受診者は延べ25,755人で、初回受診は46.9%、複数回受診53.1%であった。7年間の成績は、視触診併用MMGは要精検率7.4%、精検結果返信率74.7%、発見率0.179%、MMG単独は要精検率6.7%、精検結果返信率72.4%、発見率0.088%、視触診単独は要精検率2.0%、精検結果返信率35.0%、発見率0.000%であった。視触診は受診者が検診をためらう大きな要因であり、検診側にとっても医師の確保と精度管理の困難さ、実施人数の制約等の問題が大きい。MMG単独の死亡率減少効果は認められているが、視触診は死亡率減少効果が十分ではなく、精度管理の問題もあり、対策型検診では平成28年度より原則MMG単独検診となった。職域においてもMMG単独検診を推進すれば、受診者は検診を受け易くなり、検診側は精度管理の向上と実施人数の増加が望め、結果としてがん発見数の増加に繋がると考えられる。費用の補助も受診率向上に効果的と考えられた。2009年4月から2013年3月までの全国健康保険協会管掌健康保険による生活習慣病予防健診受診者のMMG受診は、検診費用の補助のある偶数年齢群が奇数年齢群の約8倍と有意に多かった。職域乳がん検診は就業女性にとって利便性が高く、継続受診をし易い利点があるが、検診を効果的にするには事業所との連携が重要であり、個人情報保護を尊重しながら事業所と検診機関が連携できる仕組み作りが望まれる。
  • 菊地 恵観子, 小田 夏奈江, 千 哲三, 川久保 清
    2016 年 43 巻 3 号 p. 429-436
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
     動脈硬化性疾患の発症は、HDLコレステロール(HDL-C)の低値が関与していると報告されており、HDL-Cの適正化が求められている。HDL-Cは、喫煙、体重増加により減少すること、飲酒、運動により増加することが報告されている。このようにHDL-Cは、様々な生活習慣により変動することがわかっているが、相互の生活習慣とHDL-Cとの関係性はよく分かっていない。
     本研究では、HDL-Cと生活習慣の相互の関係性に着目し、健診を受診した男性飲酒者4,668名(喫煙群2,648名、非喫煙群2,020名)を対象として、飲酒習慣(毎日飲酒あり)のある男性における飲酒量、喫煙本数、運動習慣がHDLコレステロールに与える影響を検討した。飲酒量は、毎日飲む量(合換算)にて4群にカテゴリ化し、運動習慣は運動の有無による2値とした。
     喫煙群と非喫煙群の比較では、非喫煙群の方がHDL-C、BMIが高く、運動習慣は多く、飲酒量は少なかった。従属変数にHDL-C、独立変数に年齢、BMI、飲酒量、運動習慣の有無、1日の喫煙本数(喫煙群のみ)として強制投入法による重回帰分析を喫煙群、非喫煙群別に行った。喫煙群では、飲酒量(β=0.175、p<0.001)、運動習慣(β=0.041、p=0.023)はHDL-Cと正の相関を示し、BMI(β=-0.348、p<0.001)、たばこの本数(β=-0.079、p<0.001)は負の相関を示した。非喫煙群では、飲酒量(β=0.212、p<0.001)、運動習慣(β=0.073、p<0.001)は正の相関を示し、BMI(β=-0.375、p<0.001)は負の相関を示した。両群ともに、年齢とHDL-Cには有意な相関は認められなかった(p=0.560)。
     喫煙群および非喫煙群ともに、飲酒や運動によるHDL-C高値への影響が認められたが、BMI高値によるHDL-C低値への影響が最も大きかった。また、喫煙群では、喫煙本数が多いとHDL-Cは低値を示していた。
大会講演
日本総合健診医学会 第44回大会
  • 日野原 重明
    2016 年 43 巻 3 号 p. 437-442
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
  • 井部 俊子
    2016 年 43 巻 3 号 p. 443-446
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
     健診事業を受診者の視点で捉え、「健診サービス」の特徴をサービスビジネスとして検討した。
     サービスの特徴は、①無形性、②生産と消費の同時性、③異質性、④結果と過程、⑤共同生産であり、とりわけ顧客との共同生産は、サービス内容の決定や品質管理、学習、マーケティングの機能があることを述べた。
     では、健診サービスを受ける顧客(受診者)はどのような経験をしているのかを探るため受診者にインタビューを実施した。4人のナラティブからみえてきたことは、①受診者はそれぞれの思い(受診理由)がある。②受診者は健診結果に関心を集中している。③健診サービス提供者との関係は「ドライな距離感」がよい。④しかし、「今年もお会いできてよかった」と言ってくれるつながりがあると保健指導の価値が高まる。
  • 道場 信孝, 久代 登志男, 日野原 重明
    2016 年 43 巻 3 号 p. 447-454
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
     今日、高齢者の健康評価においてフレイルが主要な関心事になってきている。フレイルは2014年に日本老年医学会がfrailtyの訳語として決めた表現であるが、これはfrailtyのスクリーニングのために以下の単語の頭文字を並べたものと思われる:F(fatigue)、R(resistance: inability to walk up a flight of stairs)、A(ambulation: inability to walk a short distance)、I(Illnesses:5種以上の疾病)、L(Loss of body mass:5%以上の体重減)。今回はfrailtyとsarcopeniaの概略を述べるが、まずフレイルについてはFriedら(2001)が臨床の実在として挙げた5項目(体重の減少、サルコペニア、握力、疲れやすさ、歩行速度の低下)の基準と生存曲線に基づくフレイルの診断基準の正当性、次いで身体・精神・社会的機能と恒常性の維持機能との関わりにおけるフレイルの理解(Langら:2013)、そしてRockwoodら(2005)のCanadian Study for Health and Agingにもとづくフレイルの重症度診断(clinical frailty scale)について述べる。Sarcopeniaについては、European Working Group on Sarcopenia in Oldr People(EWGSOP, 2010)によって示されたコンセプト、研究および臨床における評価基準、そして診断基準について解説する。サルコペニアはフレイルのコンセプトの中で最も重要な位置づけにあり、その評価は量と質の両面からなされなければならないが、特に臨床診断では徒手法が極めて有用であり、その手法の習得は十分な臨床経験を通じて培われる。最後に、近年注目されるようになったsarcopenic obesityは重要な健康障害であり、これは脂肪が筋肉の中に浸潤する現象であって筋肉の機能を著しく障害する。脂肪細胞はそれ自体activeな内分泌器官であり、そこからは炎症性のサイトカインやホルモンが放出され、それらによって筋肉は質・量ともに変化する。フレイルに対する予防と治療の戦略においては食事と運動が主要であり、その他インフルエンザ、肺炎球菌による肺炎、帯状疱疹などに対するワクチン療法が勧められる。同時に諸種の併存病を適切に治療しておかなければならない。
  • 増田 将史
    2016 年 43 巻 3 号 p. 455-463
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
     ストレスチェック制度は当初、自殺予防対策の観点から、うつ病のスクリーニングとして検討が開始された。議論の過程で、結果に基づく労働者の不利益取扱い(解雇等)への懸念から、労働者へのストレスの気付きの機会の提供という趣旨に変遷していった。ストレスチェックは労働者の同意なく事業者が結果を把握してはならないこととされ、また不利益取扱いを禁じる規定が設定されている等、厳格かつ特殊な情報管理が要求されている。また、部署単位での集団分析結果に基づく職場環境改善が求められる等、個を対象とするこれまでの健康管理とは一線を画した特殊な位置づけとなっている。
     ストレスチェックは質問項目や判定基準の設定が各事業場に委ねられているため、精度管理を実施する上で大きな課題となることが予想される。自記式質問票による検査のため、不利益取扱いを懸念して自身のストレス状況を正しく反映しないように回答を操作することも可能である。スクリーニングとしての有効性については、今後の十分な検証が必要である。
     「総合健診」としてのストレスチェックは客観的指標によるストレスの定量化、他の疾病とストレスとの関連性の検証等が今後の方向性として期待される。集団分析については、メンタルヘルス関連指標(メンタルヘルス不調に起因する休業日数等)との相関等を分析することで、データヘルス計画、ひいては健康経営に資する取組みになることが期待される。
  • 永田 浩一, 高林 健, 安田 貴明, 金澤 英紀, 松田 尚久, 斎藤 博
    2016 年 43 巻 3 号 p. 464-470
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
     大腸がん検診目的の大腸CTの導入を目指して、欧米では2000年台前半から精度検証が開始された。米国ではNational CT Colonography Trial(ACRIN6664)が実施され、その結果として内視鏡検査に対する大腸CTの非劣性が証明された。欧州でも、ドイツ、イタリア、さらにフランスから良好な結果が報告された。これらの成功を受けて、米国では大腸CTが精度の高い大腸がん検査法として、米国癌協会、大腸がんにおける米国多学会共同作業部会、および米国放射線医学会が策定した大腸がん検診ガイドラインに掲載された。欧州でも欧州消化器内視鏡学会と欧州腹部消化管放射線学会による大腸CT適応ガイドラインでは、大腸CTの検査目的別に声明と推奨が出されている。こうした流れを受け、欧米諸国における検診目的の大腸CTは着実に普及が進んでいる。
     日本でも大腸CTと内視鏡による大腸腫瘍検出能の精度比較に関する検討Japanese National CT Colonography Trial(UMIN 2097)、および低用量前処置法を用いた大腸CTの検査精度に関する多施設共同試験(UMIN 6665)が行われた。日本の内視鏡専門医の診断をゴールドスタンダードとした検証でも、大腸CTの大腸病変に対する検出精度は先行した欧米の臨床試験と同様に高いことが証明された。
     エビデンスの蓄積を経て、日本でも大腸CT検査は健診あるいは、精密検査で大腸内視鏡検査の実施が困難な場合に、大腸内視鏡検査を補完する有用な検査法となるだろう。ただし、大腸CT検査を適切に活用するためには、精度検証に裏打ちされた適切なトレーニング・読影方法および検査手技に基づいて実施するための標準化が必須である。
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