総合健診
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原著
健診受診者の慢性腎臓病(CKD)対策における「かかりつけ医」の重要性
~全国健康保険協会東京支部CKD受診勧奨と受診動向アンケート調査から~
岡本 康子尾川 朋子馬場 武彦田島 哲也矢内 邦夫角田 徹近藤 太郎高橋 俊雅
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2016 年 43 巻 6 号 p. 649-656

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抄録

【目的】生活習慣病予防健診で慢性腎臓病(CKD)が疑われる受診勧奨者の受診動向を調査し、より有効なCKD対策を検討する。
【方法】全国健康保険協会東京支部で実施した生活習慣病予防健診を2012年度と2013年度の2年連続で受診した586,766人(平均年齢50.6歳、男性63.6%)において、血清クレアチニンによるeGFRと試験紙法による尿タンパク定性検査区分の結果をもとにCKD重症度分類を行い、2年連続「赤」「オレンジ」および「黄」に分類された受診者でeGFRが前年度から1.0mL/min/1.73m2 以上低下した健診受診者をCKD高リスク群とし、直近1年間のレセプト情報から医療機関の受診歴がない未治療者を受診勧奨者として抽出した。この受診勧奨者の受診先の動向を調査する目的で、東京都内在住者に対して、東京都医師会の協力を得て受診受付医療機関を対象に無記名アンケート調査を施行した。また、腎機能を視覚的に示すeGFRグラフを作成し、受診勧奨文書に添付した群と添付しなかった群のアンケート返送率を比較検討した。
【結果】586,766人のうち、CKD高リスク群の未治療者は5,210人(0.83%)であり、そのうちの東京都内在住者2,468人(CKD重症度分類「赤」94人(3.8%)、「オレンジ」501人(20.3%)、「黄」1,873人(75.9%))に対して受診勧奨文書と受診先医療機関に記入・返送してもらうアンケート調査用紙を送付した。受診医療機関から345人分(14.0%)の返送を得た。アンケート回答の分析から、62.0%が「初診」で、直近1年間に高血圧・糖尿病・脂質異常症・肥満症・腎臓病でない疾患で受診している再診者が38.0%と推定された。受診先が腎臓専門医は31.9%(110名)、かかりつけ医は68.1%(235人)であった。かかりつけ医は、受診者の66.0%(235人中155人)を「自院で治療継続または経過観察する」、8.9%(21人)を「腎臓専門医に紹介する」と回答した。アンケート返送率はeGFRグラフの添付群が非添付群より有意に高かった。
【結論】かかりつけ医は、健診後のCKD対策に重要な役割を担っている。かかりつけ医の活躍と腎臓専門医との連携と役割分担でCKD対策が進むことが期待される。

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© 2016 一般社団法人 日本総合健診医学会
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