総合健診
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原著
大学生のインターネット依存傾向と健康度および生活習慣との関連性
片山 友子水野(松本) 由子
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ジャーナル オープンアクセス

2016 年 43 巻 6 号 p. 657-664

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抄録

 総務省の調査によると、20代のインターネット利用は99%を超え、スマートフォンでの利用は約88%となっており、スマートフォンの使用者は急増している。インターネットは情報収集やコミュニケーションのツールとして利便性が高いが、一方で、インターネット依存が心身に悪影響を与える可能性が指摘されている。本研究では、スマートフォンの利用率が高い大学生を対象に、インターネット依存傾向のある者の健康度および生活習慣、気分状態の関連性について検討を行った。
 インターネット依存傾向尺度による分類から、インターネット依存傾向群をⅠ群、非依存群をⅡ群とする2群に分類した。この2群について、心身の健康および生活習慣、気分状態の調査を行い、その特徴を分析した。
 調査の結果、対象者156名中、Ⅰ群は58%、Ⅱ群は42%であった。Ⅰ群はⅡ群と比較すると、身体的健康度、精神的健康度、睡眠の充足度が有意に低値を示した。Ⅰ群は、睡眠不足のため、昼間に眠たくなり、勉強がスムーズにはかどらず、大学生活に影響を及ぼしていることが示唆された。また、就寝時間が遅くなることから夜食の習慣化が生じ、目覚めの体調不良から朝食の欠食などがみられ、イライラ感や肥えすぎ・やせ過ぎなどにも繋がると考えられた。心理検査では、Ⅰ群はⅡ群と比較すると、不安感、抑うつ感、イライラ感がつのっていることが分った。これらの結果から、ネット依存傾向のある者は、睡眠習慣と身体的および精神的健康に相互に悪影響を与える可能性が示唆された。さらに、Ⅰ群の約65%にインターネット依存傾向があることを自覚しているが、約17%には自覚がなく、依存傾向が進行する可能性が示唆された。
 依存が深刻化する前に予防教育を行い、インターネット依存が生活習慣や心身の健康に与える危険性について啓発することが重要であることが示唆された。

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© 2016 一般社団法人 日本総合健診医学会
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