総合健診
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超高齢社会における問題点と総合健診
超高齢社会に立ち向かう運動器科学の立ち位置としてのロコモティブシンドローム
大江 隆史
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ジャーナル オープンアクセス

2017 年 44 巻 2 号 p. 349-359

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抄録

 ロコモティブシンドローム(以下 ロコモ)は日本が超高齢社会となった2007年に日本整形外科学会が提唱した概念であり、運動器の障害のため、移動機能の低下をきたした状態で、進行すると介護が必要となるリスクが高まるものと定義されている。
 ロコモの概念は、運動器に高齢者でのcommon diseaseである骨粗鬆症、変形性関節症、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、サルコペニアなどの運動器疾患が起こるとそれらが連鎖、複合して運動器の痛みや、筋力低下やバランス能力低下などの運動器の機能低下をきたし、またその機能低下が運動器疾患をさらに悪化させたりしつつ、移動機能低下(歩行障害)に進展し、さらに悪化すると最後には介護状態に至るというものである。
 ロコモの評価法には自分でロコモに気づくための簡単な質問票、すなわちロコチェックとロコモを定量的に測るロコモ度テストがある。後者は移動に関する運動機能検査である立ち上がりテスト、2ステップテストと身体状態や生活状況に関する指標であるロコモ25から成り、ロコモの始まりである「ロコモ度1」と移動機能低下が進行した「ロコモ度2」を判断する。「ロコモ度1」は立ち上がりテスト:片脚 40cmができない、2ステップテスト:1.3未満、ロコモ25:7点以上、のどれか1つでも当てはまるもの。「ロコモ度2」は立ち上がりテスト:両脚 20cmができない、2ステップテスト:1.1未満、ロコモ25:16点以上、のどれか1つでも当てはまるものである。対処法として、「ロコモ度1」なら自らの努力を、「ロコモ度2」なら整形外科専門医の受診を推奨している。疾患があればその治療が、疼痛にはその薬物療法が必要である。機能低下については、バランス能力の低下には開眼片脚起立を、筋力低下にはスクワットをロコトレと命名して推奨している。
 高齢者に生じる様々な障害を巡っては様々な概念が生まれ、現在のところそれらの関係については意見の一致をみていないが、業界内での混乱と競争を避け、秩序と協働を志向することが国民の利益になる。

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© 2017 一般社団法人 日本総合健診医学会
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