総合健診
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44 巻 , 2 号
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特集
超高齢社会における問題点と総合健診
  • 堀田 知光
    2017 年 44 巻 2 号 p. 341-348
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     がんは1981年に死亡原因の第1位となりさまざまな対策が取られてきたが、依然として国民の生命および健康にとって重大な脅威となっている。2012年のがん死亡者数は全死亡125.6万人の約3分の1にあたる36.0万人であった。そのうち65歳以上の高齢者は29.4万人(全がん死亡の81.4%)、75歳以上に限っても20.7万人(全がん死亡の57.2%)と過半数を占めている。まさに高齢化がん多死社会の到来である。一方で、がん対策推進基本計画の重点目標である「がんによる死亡者の減少(75歳未満の年齢調整死亡率20%減)」では後期高齢者は除外されている。また、検診率50%を目標とするがん検診では、集計対象は40歳~69歳に絞られている一方、対策型がん検診は年齢上限が設定されていないという矛盾がある。高齢者における検診の利益と不利益のバランスを考慮した適正な対象とすべきであろう。
     高齢者に対する治療の考え方は、個々の患者におけるがん死の時期が平均余命より前か否かで分かれる。平均余命前と予想される場合は、身体機能や日常生活活動度、認知機能、療養に対する意欲などを評価し、問題がなければ非高齢者と同様の標準治療を行う。重大な問題がある場合は、対症療法や緩和ケアを選択し、問題があるが何らかの治療が可能な場合は、個々の患者に適した治療法を選択する。今日では高齢者に特有のがん種の存在や増殖様式が明らかになりつつあることから、高齢者がんの特性を踏まえた新たな低侵襲治療の開発が望まれている。
     2016年より「がん登録推進法」が実施され、全国がん登録が始まった。がんの罹患率や生存率が実測値として把握可能となる。また、院内がん登録との両輪で、高齢者がんのより詳細な実態が明らかになることが期待される。今後は検診データやレセプトデータとの統合によって予防・治療の目標設定やアウトカム評価に資すること望まれる。
  • 大江 隆史
    2017 年 44 巻 2 号 p. 349-359
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     ロコモティブシンドローム(以下 ロコモ)は日本が超高齢社会となった2007年に日本整形外科学会が提唱した概念であり、運動器の障害のため、移動機能の低下をきたした状態で、進行すると介護が必要となるリスクが高まるものと定義されている。
     ロコモの概念は、運動器に高齢者でのcommon diseaseである骨粗鬆症、変形性関節症、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、サルコペニアなどの運動器疾患が起こるとそれらが連鎖、複合して運動器の痛みや、筋力低下やバランス能力低下などの運動器の機能低下をきたし、またその機能低下が運動器疾患をさらに悪化させたりしつつ、移動機能低下(歩行障害)に進展し、さらに悪化すると最後には介護状態に至るというものである。
     ロコモの評価法には自分でロコモに気づくための簡単な質問票、すなわちロコチェックとロコモを定量的に測るロコモ度テストがある。後者は移動に関する運動機能検査である立ち上がりテスト、2ステップテストと身体状態や生活状況に関する指標であるロコモ25から成り、ロコモの始まりである「ロコモ度1」と移動機能低下が進行した「ロコモ度2」を判断する。「ロコモ度1」は立ち上がりテスト:片脚 40cmができない、2ステップテスト:1.3未満、ロコモ25:7点以上、のどれか1つでも当てはまるもの。「ロコモ度2」は立ち上がりテスト:両脚 20cmができない、2ステップテスト:1.1未満、ロコモ25:16点以上、のどれか1つでも当てはまるものである。対処法として、「ロコモ度1」なら自らの努力を、「ロコモ度2」なら整形外科専門医の受診を推奨している。疾患があればその治療が、疼痛にはその薬物療法が必要である。機能低下については、バランス能力の低下には開眼片脚起立を、筋力低下にはスクワットをロコトレと命名して推奨している。
     高齢者に生じる様々な障害を巡っては様々な概念が生まれ、現在のところそれらの関係については意見の一致をみていないが、業界内での混乱と競争を避け、秩序と協働を志向することが国民の利益になる。
  • 秋山 治彦
    2017 年 44 巻 2 号 p. 360-369
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     社会の高齢化に伴い、本邦における認知症の人の数は、現在の約500万人から2030年には約700万人に増加すると推定されている。しかし世界の状況はもっと深刻で、先進国で認知症が約2倍になると見込まれる2050年に、社会・経済基盤が脆弱な発展途上国では3倍以上に増加すると推定されている。その結果、現在、1年間に世界で8,180億ドルと推計されている、認知症による経済負担は、2018年に1兆ドル、2030年に2兆ドルを超すと予想されている。これまでの疫学研究の成果をもとに、運動、食事、知的活動、心血管リスクの管理などの予防介入が試みられているが、血管性認知症は別として、神経変性疾患による認知症への効果は大きなものではない。認知症の原因の過半数を占めるAlzheimer病(AD)の根本治療薬(病態修飾薬)開発は人類にとって待ったなしの課題なのである。ADの脳病変においてアミロイドβ蛋白(Aβ)とタウ蛋白の異常蓄積は病因に深く関わっており、特にAβ蓄積はAD特異的な変化である。現在、これらAD特異病変を反映するバイオマーカーの開発が進んでいるが、これは言い換えれば、今、行われている診断が臨床症状や脳の萎縮・代謝低下の分布などの間接的な所見の積み上げにもとづくものであって、複数の認知症疾患合併の可能性も含めて、常に慎重な判断が求められることを意味する。また、AD特異的バイオマーカーの研究は、ADが20~30年におよぶ無症候~軽度認知障害の期間を経て、脳病変が既にかなり高度になった段階で漸く認知症に至ることを明らかにした。その結果、病態修飾薬の開発、治験では“認知症発症前の治療”が焦点になってきた。発症前治験の実施は、治験期間の長期化やコストの増大などを招き、このような困難の克服をめざして産官学の密接な連携や国際連携が求められている。
  • 佐竹 昭介, 荒井 秀典
    2017 年 44 巻 2 号 p. 370-377
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     高齢者の健康問題を考える時、疾患のみならず、心身機能の衰えを視野に入れる必要がある。そこには、体力や気力の低下という老いに伴う問題が存在している。これらの問題の重要性は、75歳以後の要介護の原因が、加齢に伴う衰弱などの疾患概念では捉えにくい問題が主因となってくることからも明らかである。日本老年医学会は、加齢に伴う衰えを「フレイル」と表現することを提唱し、その積極的な予防対策により自立障害に至る過程を遅らせる重要性を説いている。
     フレイルの捉え方には大きく2つの考え方があり、加齢に伴う障害や生活機能障害、疾患などの蓄積を評価することでフレイルを捉える「障害蓄積モデル」と、加齢に伴う生体機能の低下により表出してくる症候を捉える「表現型モデル」がある。いずれの評価でも、将来の健康障害発生を予測することが可能であり、フレイルは高齢者の健康評価には不可欠な視点になっている。しかし、その評価方法は一つに定まっておらず、多数の評価方法が存在しているのが現状である。
     フレイルの予防対策は、バランスの良い栄養摂取と運動習慣の確立というライフスタイルに関わる改善が主体である。栄養では、従来よりも積極的な蛋白質摂取が推奨されるようになっている。運動では、筋肉の衰えを改善しうるレジスタンス運動が推奨されるが、フレイル高齢者にとっては、歩行を含めた運動習慣の獲得が重要と思われる。
     高齢者における自立障害の予防が、健康長寿社会には重要であり、フレイルという概念を取り入れることで、その実現に寄与しうることが期待されている。
原著
  • 宮島 江里子, 角田 正史, 押田 小百合, 五十嵐 敬子, 三枝 陽一, 美原 静香, 吉田 宗紀, 野田 吉和, 大井田 正人
    2017 年 44 巻 2 号 p. 378-386
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】我が国の喫煙率は最近5年は約20%前後と横ばい状態であり、30~40代の労働年代が他の年代に比べて高い。本研究では、禁煙指導や受動喫煙防止のための参考資料を得ることを目的に、喫煙労働者の禁煙無関心者の特徴、非喫煙者への配慮状況、非喫煙労働者の嫌煙意識を調査した。
    【対象と方法】某2事業所(A, B)の製造業労働者に質問紙票調査を行い、回答に欠損のない815人分を解析した。調査項目は、基本事項(年齢、性別、事業所)、喫煙状況(現在/過去・非喫煙)、喫煙影響の考え方3項目(喫煙者の健康影響、周囲の健康影響、周囲の迷惑)、喫煙者には1日の喫煙本数、禁煙への関心、非喫煙者への配慮、受動喫煙の害の知識、禁煙・減煙の理由、非喫煙者には嫌煙意識(苦痛・気になる/気にならない)を尋ねた。喫煙者の禁煙関心と配慮の有無について、基本事項、喫煙影響3項目、喫煙本数、受動喫煙の知識の有無との関連を、χ2 検定又はFisherの直接確率法で検討した。
    【結果】喫煙率は44.3%で、喫煙者の48.5%が禁煙無関心者であり、B事業所、1日21本以上喫煙、喫煙者への健康影響意識が低い群に有意に多かった。禁煙・減煙の理由は「健康に悪い」「お金がかかる」「吸いにくい環境」が多かった。非喫煙者へ無配慮は40.7%であり、受動喫煙の知識無の群に有意に多かった。非喫煙者の嫌煙「気になる・苦痛」は91.4%であった。
    【考察】喫煙率の高い労働年代が多い製造業職場での喫煙率は高く対策が必要である。禁煙無関心者には健康影響の指導が関心を引き出すために有効である。関心者には、健康指導に加え、金銭的メリットや環境整備及び禁煙外来についての情報提供が禁煙に繋がる可能性がある。非喫煙者の殆どに嫌煙意識があり、喫煙者が配慮するようになるためには受動喫煙の害の啓発が有効と考える。
  • 川端 秀仁, 角南 祐子, 千葉 幸惠, 麻薙 薫, 村田 陽稔, 柳堀 朗子, 片桐 克美, 鈴木 公典, 藤澤 武彦
    2017 年 44 巻 2 号 p. 387-397
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】日本人の中途失明原因の第一位は緑内障であり、多くは正常眼圧緑内障と言われている。日本緑内障学会で行った疫学調査(多治見スタディ)によると、40歳以上の日本人の5%が緑内障でありうち72%が正常眼圧緑内障と報告されている。しかし、緑内障発見に有効である眼底検査は、2008年度以降の特定健康診査では、ごく限られた対象者にしか実施されていない。
     近年安価で、小型軽量な簡易視野計(Frequency Doubling Technology Screener; FDT)が開発されたため、成人眼検診として出張検診で眼底検査とFDT検査を併用した場合の効果と有用性の検証を行った。
    【方法】2012年度秋に定期健康診断を実施している某企業の従業員2,392名のうち、同意を得て検診を行った892名(男738名、女154名)に成人眼検診(問診、視力、眼底検査、FDT検査)を実施した。判定は、日本緑内障学会のガイドラインに準拠した。また、緑内障疑いで垂直CD比(0.7≦垂直CD比<0.9)かつFDT検査が陰性の者を継続管理者として区分し、精密検査対象者には眼科受診を勧奨した。
    【結果】成人眼検診で所見が見られた(要精密検査73名、要医療12名)85名のうち、精密検査を受診した59名から、緑内障7名を発見した。40歳以上の成人眼検診結果では、緑内障有病率(補正後)は1.67%となった。
     成人眼検診の緑内障(緑内障疑いおよび緑内障関連病を含む)に対する陽性的中率は89.5%となり緑内障の早期発見に有用であることが判った。
     また、眼底検査に所見が無く簡易視野検査のみに所見を認めた11名の精密検査結果は、受診した9名中7名の内訳は緑内障1名、網膜神経線維束欠損1名、黄斑変性症3名、乳頭陥凹拡大1名、軽微な網膜異常1名であった。
    【結論】成人眼検診は、眼底検査では発見できなかった疾患を簡易視野検査で発見できた。また、緑内障発見に対する感度も高く、精密検査対象者の絞込みができ、有用な検診方法であることが認められた。
症例報告
  • 今泉 知津絵, 山﨑 敦史, 鈴木 正臣, 金田 由美, 朝蔭 さとみ, 斎藤 百代, 豊田 澄男, 瀬川 昻生, 長井 辰哉
    2017 年 44 巻 2 号 p. 398-402
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     症例は41歳男性、2014年2月に当院健診センターを受診し、初めて受けた健診による腹部超音波検査にて当初肝右葉と思われた領域に境界明瞭で輪郭が平滑で、内部エコーが均一な高エコー像を認めた。当初、肝血管腫などを疑った。精密検査による造影CT検査、MRI、腹部血管造影の再検査、内分泌血液検査および腹部超音波の再検査にて、副腎骨髄脂肪腫と診断した。本人の希望にて経過観察となって、1年後に再び当院健診で行った腹部超音波検査にて腫瘤像が増大したため腹腔鏡下摘出手術を行った。病理検査にて副腎骨髄脂肪腫と確定診断された。
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