近年、医師および医療スタッフの専門性を前提とした、多職種連携によるチーム医療の提供が推奨されている。多職種連携によるチーム医療の効果として、①医療の質の向上、②医師の負担軽減、③医療安全の向上、④医療経費の削減等が期待され、厚生労働省は医政局長通知(平成19年、22年)として、医療スタッフが現行制度の下で実施可能な業務を具体的に示している。
ドックは、一次予防(疾病の予防、健康の啓発、健康増進等)および二次予防(疾病の早期発見・早期措置と合併症対策等)が主な目的とされ、医師と医療スタッフの協働作業による実施は、多職種連携によるチーム医療の典型的な場と云える。特に、いわゆる“未病”段階の受診者を対象とした一次予防健診では、食育(栄養指導)、体育(運動療法)、知育(動機付け・行動変容・ストレス対策・睡眠指導)等の説明および指導は重要であり、それらは各医療スタッフの専門性に基づく業務となる。さらに生活習慣病を対象とした場合、薬剤師・看護師には処方提案と共に薬物療法による副作用の把握等も期待される。副作用の把握に際し、薬剤師・看護師にも問診、フィジカルアセスメント(視診、触診、バイタルサイン等)による臨床推論の実施が求められる。
しかし、医療スタッフによる説明・指導および臨床推論等の実施については、医師法第17条(医師でない者の医業禁止)を根拠として医師や法律家の中に様々な意見があり、未だコンセンサスは得られていない。また、医療スタッフによるそれらの実施については、受診者からも十分な理解と承諾を得る必要がある。
今後、健診における医療スタッフの専門性に基づく多職種連携の課題として、医療スタッフを対象とした、より高度な知識・技能・態度を修得するための教育プログラム(①卒前カリキュラム、②国家試験、③卒後研修および生涯教育制度)の改革および業務拡大を前提とした法制度の整備等が必須となる。