総合健診
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日本総合健診医学会 第47回大会
日本総合健診医学会 第47回大会・シンポジウム2 包括的リスク管理チャートの健診応用 冠動脈疾患絶対リスク評価および個別化脂質管理目標値設定のための吹田スコア
塚本 和久
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ジャーナル オープンアクセス

2019 年 46 巻 5 号 p. 480-488

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抄録

 わが国において、動脈硬化性疾患である心疾患と脳血管疾患を合わせると、その死亡数は死因第一位である悪性新生物のそれに比肩するレベルに達する。これら動脈硬化性疾患に対する予防対策として、2008年に特定健診・特定保健指導による生活習慣病対策が開始され、さらには一般臨床で用いる包括的ガイドラインとして「脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャート2015」(以下、「2015チャート」)が2015年に作成された。

 動脈硬化発症・進展には、多くの危険因子が関与する。そして、同年齢・同性であっても、これら危険因子の存在の有無やその程度により、動脈硬化性疾患を発症する絶対リスクは異なる。欧米では以前よりこのような概念での絶対リスク評価ツールが使用されていたが、我が国でも2012年に「NIPPON DATA 80」を絶対リスク評価ツールとして動脈硬化学会が採用し、「2015チャート」詳細版のステップ4でも「NIPPON DATA 80」が使用された。そして2017年には現在の日本の現状により適合したツールとして、「吹田スコア」が動脈硬化性疾患予防ガイドラインで採用された。

 さて、健診施設では健診受診者に対して、「受診勧奨」「保健指導」「経過観察」の振り分けを行うが、個々人の脂質管理目標値はその絶対リスクに応じて異なるゆえ、一律の値での振り分けは理にかなわない。一方、健診データはデータベースに入力されており、プログラムを作成すれば「吹田スコア」に従った絶対リスク評価、管理目標値設定、そしてそれに応じた個々人の振り分けが可能となる。本講演・本稿では、本学会がその採用を検討している層別化ツール「吹田スコア」を「2015チャート」などと照らし合わせながら概説するとともに、「吹田スコア」採用にあたってのメリットおよびデメリットに言及し、さらに現在の日本の状況を鑑みた中性脂肪値のスクリーニング基準についても考察した。

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© 2019 一般社団法人 日本総合健診医学会
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