総合健診
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日本総合健診医学会 第48回大会
日本総合健診医学会 第48回大会・シンポジウム1 行動変容の理論と実践 ヘルスリテラシーと健康行動の変容
江口 泰正
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2020 年 47 巻 6 号 p. 653-659

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抄録

 人々が自発的、自主的に健康行動をとっていけるようにしていくためには、その基本能力としての「ヘルスリテラシー」が重要となる。この「ヘルスリテラシー」という能力を健康情報の「入手」「理解」「評価」「活用」といった局面要素に分類したとき、対象者がどの局面の能力が不十分であるかを把握できれば、効率的な保健指導に結びつけることが可能となる。一方、保健指導者においては、対象者が「理解」しやすくて容易に「評価」でき、活用していけるように支援していく工夫が求められるため、健康情報を提供する側のリテラシーも重要となる。

 他方、健康情報の面でこれらのリテラシーが高いからと言って、誰でもが健康行動をとっていくことにつながるわけではない。「理解」「評価」と「活用」との間に大きな壁が存在するといっても過言ではない。このような「わかっているけれども、やれない人」をどのように支援すれば健康行動につながるのかを探究していくことは、これからの重要課題と言える。たとえ論理的には正しくても、行動目標が複雑だったり、興味が沸かない内容だったりするものであれば相手の心には響かない。相手の感情や行動特性に働きかけることも求められる。

 我々が実施したRCTによる介入研究の結果からは、運動の効果を前面に出した支援を行った群よりも、運動の過程を楽しむことを前面に出した支援を行った群のほうが介入期間中の離脱者が少なかった。保健指導者においては、ともすれば健康行動の結果や成果ばかりに目が行き、そのことだけを相手に伝えてしまいがちである。しかしながら、行動変容を促すためには、そればかりではなく「楽しみながら」取り組める機会を増やすことをもっと支援した方が良いのかもしれない。健康情報に対する「リテラシーを高める支援」に「人の心に寄り添う行動科学的な支援」をどのように絡めていくと良いのかについて、さらに研究を進めていく必要がある。

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© 2020 一般社団法人 日本総合健診医学会
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