2020 年 47 巻 6 号 p. 647-652
食行動は他の健康行動と比較して、変容させるのが難しいとされている。本稿では、食行動の特徴を踏まえて、健診後の生活習慣改善指導において、食行動の変容を促すポイントを解説する。
まず、行動視点で受診者の話を聴くことである。食行動変容を促すには、食物視点と行動視点の両方のアドバイスが必要である。もし、エネルギーや栄養素といった食物視点のアドバイスだけに偏ると、「わかっているけど、できない」人を生んでしまう。習慣化された行動は、行動の鎖のように連なってパターン化されている。行動の鎖をイメージしながら、食生活を把握することで、問題行動にたどりつかないよう、鎖をどこで切ればよいかを提案できる。
次に、自信を高める情報提供を行うことがあげられる。行動変容の準備性を「重要性」と「自信」の二軸で考えると、「重要性」は高いが、「自信」が低い人が「わかっているけど、できない」人である。この人たちには、「重要性」を高めるより、「自信」を高める方が時間を有効に活用できる。「自信」を高めるためには、行動ができなくなりそうな場面(誘惑場面)で、どのような対策がとれるかといった情報が、有効である。
最後に、食物の情報を提供する際は、料理・食事レベルの情報にすることがあげられる。食物の情報には、栄養素・食品・料理・食事・行動レベルがあるが、栄養素や食品レベルの場合、自己評価が難しく、実践もしにくい。料理・食事レベルに置き換えてアドバイスすることが望まれる。
健診後の生活習慣改善指導は、時間が限られており、栄養素レベルまでの評価とアドバイスは難しい。標準的な質問票をうまく活用し、行動視点から話を聴き、「それだったら、できそう」と思ってもらえる指導を心がけることが重要である。