総合健診
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ウィズコロナ時代の総合健診
肺の構造と感染様式、臨床経過および重症化リスクについて
桑平 一郎
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ジャーナル オープンアクセス

2021 年 48 巻 2 号 p. 213-219

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抄録

 ヒトの肺には3億から5億の肺胞があり、肺胞の表面を肺胞上皮細胞が覆う。この中のⅡ型肺胞上皮細胞に、SARS-CoV-2 がドッキングする受容体であるアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)が発現する。ウイルスはここから宿主細胞に侵入、感染が広がり肺炎を発症する。

 発熱、全身倦怠感、咽頭痛、咳嗽、筋肉痛など風邪やインフルエンザのような症状が出現するが、下痢などの消化器症状や味覚障害や嗅覚障害もみられる。WHOによれば潜伏期間は1~14日間で、曝露から5日程度で発症することが多い。ヒトへの感染可能期間は、発症前2日から発症後7~14日間程度である。咳嗽やくしゃみなどを介する飛沫感染と接触感染が主体であり、一部エアロゾルも関与する。最近の報告では無症候者からの感染も40%あるいはそれ以上あるのではないかと言われる。厚生労働省による「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」によれば、発症から1週間程度で軽症のまま経過し改善する症例が80%、肺炎が悪化して入院を要する症例が残りの20%、そのうちICUでの加療を要する症例が5%、救命できない症例が2~3%と報告される。

 重症化のリスク因子としては、65歳以上の高齢、基礎疾患としての悪性腫瘍、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎臓病、2型糖尿病、高血圧、高脂血症、固形臓器移植後の免疫不全の存在、そして肥満(BMI 30以上)、喫煙習慣などが挙げられる。性別では、男性の方が女性よりも死亡率が高い。

 回復した後も、倦怠感、息切れ、関節痛、胸痛、慢性咳嗽が遷延する場合があり、味覚障害、嗅覚障害、口腔乾燥も認められる。ACE2受容体が全身臓器に分布することを考えれば、多様な症状が出現し、後遺症として残ることも理解できよう。これまでの普通の風邪とは様子が異なることも印象的である。

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© 2021 一般社団法人 日本総合健診医学会
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