総合健診
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48 巻, 2 号
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特集
ウィズコロナ時代の総合健診
  • 桑平 一郎
    原稿種別: 特集
    2021 年 48 巻 2 号 p. 213-219
    発行日: 2021/03/10
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル オープンアクセス

     ヒトの肺には3億から5億の肺胞があり、肺胞の表面を肺胞上皮細胞が覆う。この中のⅡ型肺胞上皮細胞に、SARS-CoV-2 がドッキングする受容体であるアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)が発現する。ウイルスはここから宿主細胞に侵入、感染が広がり肺炎を発症する。

     発熱、全身倦怠感、咽頭痛、咳嗽、筋肉痛など風邪やインフルエンザのような症状が出現するが、下痢などの消化器症状や味覚障害や嗅覚障害もみられる。WHOによれば潜伏期間は1~14日間で、曝露から5日程度で発症することが多い。ヒトへの感染可能期間は、発症前2日から発症後7~14日間程度である。咳嗽やくしゃみなどを介する飛沫感染と接触感染が主体であり、一部エアロゾルも関与する。最近の報告では無症候者からの感染も40%あるいはそれ以上あるのではないかと言われる。厚生労働省による「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」によれば、発症から1週間程度で軽症のまま経過し改善する症例が80%、肺炎が悪化して入院を要する症例が残りの20%、そのうちICUでの加療を要する症例が5%、救命できない症例が2~3%と報告される。

     重症化のリスク因子としては、65歳以上の高齢、基礎疾患としての悪性腫瘍、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎臓病、2型糖尿病、高血圧、高脂血症、固形臓器移植後の免疫不全の存在、そして肥満(BMI 30以上)、喫煙習慣などが挙げられる。性別では、男性の方が女性よりも死亡率が高い。

     回復した後も、倦怠感、息切れ、関節痛、胸痛、慢性咳嗽が遷延する場合があり、味覚障害、嗅覚障害、口腔乾燥も認められる。ACE2受容体が全身臓器に分布することを考えれば、多様な症状が出現し、後遺症として残ることも理解できよう。これまでの普通の風邪とは様子が異なることも印象的である。

  • 忽那 賢志
    原稿種別: 特集
    2021 年 48 巻 2 号 p. 220-228
    発行日: 2021/03/10
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル オープンアクセス
  • 今井 鉄平
    原稿種別: 特集
    2021 年 48 巻 2 号 p. 229-232
    発行日: 2021/03/10
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル オープンアクセス

     新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行に対して、各企業においては「新しい生活様式」に沿った事業運営を、長期間に渡り求められることが想定される。加えて、業種ごとに特殊な業務上の感染リスクを有している場合があり、事業環境・職場環境に合った感染予防策を取りつつ、従業員の安全と健康の確保を図っていくことも求められる。

     流行の状況を踏まえながら、事業環境に合った感染予防策を柔軟に進めていくのに、最終意思決定者である企業経営者に正確な情報が集まる仕組みを各企業で持つことが重要である。産業医等の産業保健専門職が関わることで、正確かつ有用な情報が提供されることが期待できるが、小規模企業においてはこのような支援を受けることは困難である。本稿では、このような小規模企業も含めて、各企業が行うべき感染予防対策の進め方について述べる。

原著
  • 永山 照美, 長沼 文雄, 星野 真知子, 逸見 佳代, 荒木 健彦, 山岸 由紀孝, 鶴谷 英樹
    原稿種別: 原著
    2021 年 48 巻 2 号 p. 233-242
    発行日: 2021/03/10
    公開日: 2021/04/20
    [早期公開] 公開日: 2021/01/12
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】健診における接遇改善のため、自己評価表を用いてのアンケート調査を当センタースタッフに行い、自己評価の改善度とその特徴を検討した。

    【方法】施設内接遇研修会(平成30年1月)受講後の当健診センタースタッフ30名に接遇自己評価表によるアンケートを同年3月、6月、9月、12月に実施し、自己評価の低い項目を始業時に読み上げ、留意して行動するよう啓発した。自己評価は「挨拶」、「態度」、「言葉遣い」、「表情」、「身だしなみ」、「その他」の6カテゴリーに分け、「挨拶」5項目、「態度」12項目、「言葉遣い」10項目、「表情」6項目、「身だしなみ」15項目、「その他」6項目について出来ているものは1点、出来ていないものは0点としてスコア化し、結果は満点スコアに対する%で表示し比較検討した。

    【結果】(1)各カテゴリーの初回(3月)と最終(12月)の自己評価を比較すると全てにおいて最終時点で有意に自己評価の改善を認めた(「挨拶」85±21 vs 99±5%、「態度」75±25 vs 93±14%、「言葉遣い」73±21 vs 91±17%、「表情」71±27 vs 90±15%、「身だしなみ」94±8 vs 98±4%)。(2)「態度」の最終評価時(83±14 vs 95±13%、p=0.03)と「表情」の初回評価時(50±20 vs 77±24%、p=0.02)で男性が女性に比し有意に低かった。(3)年齢層(30~40代 vs 50~60代)および職種(看護職vs 事務職)間での差は認められなかった。

    【結語】スタッフの自己評価表による複数回のアンケート実施は、全てのカテゴリーにおいて自己評価の改善が認められ有用であった。男性においては女性に比し、「表情」での初回の自己評価が低く、「態度」での改善度も低いという性差があることが示された。これらの結果は接遇研修等の場での指導に役立つ情報を提供するであろう。

報告
  • 小笠原 翼, 佐藤 ひとみ, 菅原 由紀江, 奥山 千佳子, 後藤 敏和, 菊地 惇
    原稿種別: 報告
    2021 年 48 巻 2 号 p. 243-247
    発行日: 2021/03/10
    公開日: 2021/04/20
    [早期公開] 公開日: 2021/01/20
    ジャーナル オープンアクセス

     健診時の採血においても合併症は発生する。採血部位別、使用針別に合併症頻度を検討し、より安全な採血方法を探った。対象は2018年4月から12月まで、当センターを受診した 52,830人で、採血部位(橈側皮静脈、肘正中皮静脈、尺側皮静脈)別、使用針〔採血針(ホルダー採血用の両方向直針)、翼状針、注射針(注射器採血に用いる直針)〕別に合併症の頻度を比較した。全体の合併症は0.17%、採血部位別では、橈側19/12,663例(0.15%)、正中39/31,025例(0.13%)、尺側29/8,227(0.35%)で、橈側と正中では差を認めず、尺側で橈側(p<0.01)、正中(p<0.001)に比し有意に多かった。針別には、採血針14/11,792例(0.12%)、翼状針70/39,371例(0.18%)、注射針9/1,667例(0.54%)で、採血針と翼状針の間に差は無かったが、採血針と注射針(p<0.001)、翼状針と注射針(p<0.001)の間には有意差を認めた。合併症の種類は、痛みが37.2%と最多で、内出血・腫れが28.7%、血管迷走神経反応が24.5%、痺れが9.6%だった。神経損傷が疑われる合併症(痛み・痺れ)に比し血管合併症(内出血・腫れ)は、より年齢の高い層に多い傾向にあったが、血管迷走神経反射は若年層に多く発生した。翼状針は成功率が高く合併症が少ないとされているが、今回は直針との間に差を認めなかった。以上の結果より、当センターでは、翼状針の使用を推奨し、採血部位は尺側皮静脈を避け、目視で良好な橈側、肘正中皮静脈については直針の使用も可能とした。

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