2021 年 48 巻 6 号 p. 525-533
人間ドックにおける腹部超音波検査での腎臓・尿路のがん発見数は他の部位と比べても最も多い。またその罹患数が増加している一方で、70歳以上のドック受診者数が減少しているという現状がある。
このような背景のなかで、超音波検査による疾患の拾い上げや悪性疾患との鑑別に苦慮することも多い。今回は「腎、尿路、膀胱領域のTips」と題して、多房性嚢胞性腎癌、腎血管筋脂肪腫、腎盂腫瘍、膀胱走査の重要性、日常の超音波検査上のヒントについて説明する。多房性嚢胞性腎癌は、嚢胞壁や隔壁の不整肥厚や肥厚部分のカラードプラでの血流検出が良性との鑑別点となる。また高エコー腫瘤の代表とされる腎血管筋脂肪腫については、3cm以下の腎細胞癌は、高エコーを呈する頻度が高いという事実があり、高エコー腫瘤がすべて腎血管筋脂肪腫とは言えない。腎盂腫瘍では、中心部高エコー帯に注目することで、発見可能である。水腎症症例ではその原因を尿路から膀胱方向へ探ることが重要である。膀胱癌は膀胱を走査することで発見可能であるので、尿を貯めた状態で検査を行う工夫が必要となる。
また超音波検査上のヒントとしては、腎臓の構造は単純ではなく、正常構造物と病変の区別を行なう上でも、正常解剖を理解したうえで走査を工夫することやカラードプラの活用が重要である。