総合健診
Online ISSN : 1884-4103
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48 巻, 6 号
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原著
  • 根本 まなみ, 稲葉 洋平, 熊田 祐也, 千田 浩一
    原稿種別: 原著
    2021 年 48 巻 6 号 p. 495-500
    発行日: 2021/11/10
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル オープンアクセス

     上部消化管X線検査における受検者の被ばく線量は、装置に表示される線量情報によって把握される場合が多いが、対応している装置の稼働率は低いのが現状である。今回は当会で更新した線量情報対応の透視装置(CANON製ZEXIRA)1台を用いて、2019年7月に実施した343件の上部消化管X線検査の被ばく線量を集計し、DRLs2020(Diagnostic Reference Levels 2020)と比較を行った。また被ばく線量と受検者の身体測定項目(身長、体重、BMI、腹囲)の関係について調査を行った。

     面積空気カーマ積算値PKAと基準空気カーマKa,rの中央値はそれぞれ 17.0Gycm2 、64.9mGyであった。撮影Ka,rと透視Ka,rの中央値はそれぞれ 10.5mGy、53.6mGyであった。総和Ka,rに対する透視Ka,rの割合は0.83、積算透視時間の中央値は168.4秒、撮影回数の中央値は19枚であった。総和PKAと総和Ka,rのDRL値はそれぞれ 29Gycm2 、89mGyであり、今回の調査における上部消化管X線検査の線量中央値はDRL値のそれぞれ0.59倍、0.73倍であることが確認された。

     身体測定項目のうち総和Ka,rと相関が強かったのは体重・BMI・腹囲で、相関係数はいずれも0.71であった。BMIと透視Ka,r・撮影Ka,r・透視1秒あたりKa,r・撮影1枚あたりKa,rの相関係数は、順に0.65・0.84・0.83・0.85となった。受検者の被ばく線量と体重・BMI・腹囲とは強い相関がある。

大会講演
日本総合健診医学会 第49回大会
  • 中沢 大, 小髙 明日香, 西井 正造, 武部 貴則
    原稿種別: 大会講演
    2021 年 48 巻 6 号 p. 501-510
    発行日: 2021/11/10
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル オープンアクセス

     超高齢社会を迎えたいま、日々の生活・行動の積み重ねの結果、発症する病や障碍が急増しており、その予防・早期発見・早期治療は喫緊の課題となっている。このような社会的要請に対応し、健康の維持を目的に医療機関や民間企業等が様々な取り組みを進めているが、多くの取り組みは一般生活者が理性的に健康管理に取り組むだろう、という前提のもと設計されている点に課題が存在した。そこで、我々はまずウェルビーイングを、幸福(Happiness)を基軸とする主観的ウェルビーイングと、健康(Health)を基軸とする客観的ウェルビーイングの2軸から整理を図った。さらに、双方を高めることの可能な因子を「Enabling factor(イネーブリングファクター)」と定義したうえで、その介入の切り口から、Happiness-driven(ハピネスドリブン)とHealth-driven(ヘルスドリブン)に類型化を行った。さまざまな事例を精査した結果、ハピネスドリブンのイネーブリングファクターを用いて、主観的・客観的ウェルビーイングを高められる可能性が示唆されている。今後、生活環境にハピネスドリブンなイネーブリングファクターを溢れさせることができれば、結果として人々の肉体的・精神的・社会的にも、すべてが満たされたウェルビーイングを体現可能な社会へと近づくものと期待できる。

  • 小林 伸行
    原稿種別: 大会講演
    2021 年 48 巻 6 号 p. 511-516
    発行日: 2021/11/10
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル オープンアクセス

     従来、検診における画像所見に使用される用語は、多数の類義語が自由に使われることにより、各施設間で不統一になっている。その結果、検査所見が施設ごとに異なる用語で記載され、医学用語に不慣れな受診者に混乱が生じたり、学会等におけるデータ集積に支障を来す、などの不便を生じている。その統一化のための用語案作成を、日本総合健診医学会、日本医師会総合政策研究機構、日本人間ドック学会の3者による共同作業として行った。

     作業内容は、i)実際に登録された所見名を確認し問題点を明らかにするために、無作為に抽出した50施設816,175人分の登録所見名を調査する、ii)画像検査8種(心電図、眼底、胸部X線、上部消化管X線、上部消化管内視鏡、腹部超音波、乳腺超音波、マンモグラフィー)について標準用語を作成する、iii)作成した標準用語と同義の語を標準用語に自動的に変換すべく、類義語として収集、リスト化することである。

     多数の類義語の使用、複数の所見が1つに記載されていたり、あるいは部位と所見を1つとして記載するなどの記載形式の不統一、半角・全角文字の混在等の原因で、8画像検査で72,031種の所見名が登録されていた。その問題点を整理し、標準部位名、標準所見名からなる標準用語を作成した。さらに標準所見名と同義の用語を類義語として収集、登録した。以上の作業の結果、作業前に72,031あった所見名数は、計200標準部位名、650標準所見名、4,965類義語に整理された。

     画像検査所見の標準化の究極的な目標は、近い将来、全国的に、いつでも、どの受診者・施設においても、検査所見を簡便に参照できる態勢を構築することである。そのためには、標準所見用語の作成に加えて、全国的に記載フォーマットも統一化されることが不可欠であり、今後の課題であろう。

  • 林 務, 宮下 みゆき, 高村 智恵
    原稿種別: 大会講演
    2021 年 48 巻 6 号 p. 517-524
    発行日: 2021/11/10
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル オープンアクセス

     SRAS-CoV-2感染症(COVID-19)の蔓延により、2020年4月に、健康診断の自粛が要請された。当院でも4月に総合健診を中止し、6月から様々な制約を付けて再開している。その状況について、実施された検査件数を通して見ることにした。2019年以前と2020年を比較すると、血液検体の件数は、2020年の緊急事態宣言期間中には低下していたが、解除とともに件数は回復していた。微生物検査は、大きな低下が見られていなかった。生理検査は、緊急事態宣言期間中には低下していたが、解除後は、呼吸機能検査を除いて回復していた。内視鏡検査は、回復が遅れていた。現時点でも呼吸機能、内視鏡での制約が見られており、これに伴って健診受診者数が制限されている状態が続いている。緊急事態宣言期間中に減少した受診者数は1,400名程度で、2020年度内に当院で総合健診を受けられなかったと考えられる。今後は、受けられなかったことによる、疾患の早期発見の減少や、治療の遅れなどの影響を追跡していく必要がある。総合健診を以前と同様に再開するためには、COVID-19の収束だけでなく、検査の実施条件としての環境整備、手順の見直し等が求められる。一方で、実地臨床に供用されている検査の有用性を確認して、優良総合健診認定施設に実施を求めている基本検査項目の継続した見直しが求められる。

  • 髙丸 格
    原稿種別: 大会講演
    2021 年 48 巻 6 号 p. 525-533
    発行日: 2021/11/10
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル オープンアクセス

     人間ドックにおける腹部超音波検査での腎臓・尿路のがん発見数は他の部位と比べても最も多い。またその罹患数が増加している一方で、70歳以上のドック受診者数が減少しているという現状がある。

     このような背景のなかで、超音波検査による疾患の拾い上げや悪性疾患との鑑別に苦慮することも多い。今回は「腎、尿路、膀胱領域のTips」と題して、多房性嚢胞性腎癌、腎血管筋脂肪腫、腎盂腫瘍、膀胱走査の重要性、日常の超音波検査上のヒントについて説明する。多房性嚢胞性腎癌は、嚢胞壁や隔壁の不整肥厚や肥厚部分のカラードプラでの血流検出が良性との鑑別点となる。また高エコー腫瘤の代表とされる腎血管筋脂肪腫については、3cm以下の腎細胞癌は、高エコーを呈する頻度が高いという事実があり、高エコー腫瘤がすべて腎血管筋脂肪腫とは言えない。腎盂腫瘍では、中心部高エコー帯に注目することで、発見可能である。水腎症症例ではその原因を尿路から膀胱方向へ探ることが重要である。膀胱癌は膀胱を走査することで発見可能であるので、尿を貯めた状態で検査を行う工夫が必要となる。

     また超音波検査上のヒントとしては、腎臓の構造は単純ではなく、正常構造物と病変の区別を行なう上でも、正常解剖を理解したうえで走査を工夫することやカラードプラの活用が重要である。

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