2023 年 50 巻 6 号 p. 544-548
Helicobacter pylori(H.pylori)感染率の低下に伴い、H.pylori未感染胃癌に遭遇する機会は増加し、さまざまな組織型の胃癌が存在することが明らかになってきた。H.pylori未感染胃粘膜に発生する発赤調、隆起型のラズベリー様の外観を呈する腺窩上皮型腺癌は、その特徴的な所見から“ラズベリー様腺窩上皮型腺癌”という名称で知られている。その一方で、H.pylori未感染胃粘膜に発生するラズベリー様の外観を呈する他の胃病変の存在が報告されている。それらラズベリー様外観を呈する胃病変をRSGL(raspberry shaped gastric lesion)と定義し、RSGLの組織学的分類別の内視鏡的・臨床病理学的特徴と内視鏡的鑑別方法について解説する。RSGLは、腺窩上皮型腺癌、胃底腺型腺癌、胃底腺粘膜型腺癌、過形成性ポリープ、PPI関連病変の5種類に組織学的に分類される。腺窩上皮型腺癌は均一な発赤を認め、上皮下腫瘍様隆起を認めず、腺窩辺縁上皮の形状は多角形/弧状のみで構成されている病変が多い。胃底腺型腺癌は不均一な発赤と上皮下腫瘍様隆起を認める病変が多い。胃底腺粘膜型腺癌は均一な発赤調と上皮下腫瘍様隆起を認める病変が多い。過形成性ポリープ・PPI関連病変は均一な発赤を認め、上皮下腫瘍様隆起を認めず、腺窩辺縁上皮の形状は多角形/弧状に加え線状/点状の混在を認める病変が多い。これらの内視鏡的特徴から作成した鑑別診断アルゴリズムは、RSGLの内視鏡的鑑別に有用である。