総合健診
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第53回大会
日本総合健診医学会 第53回大会・シンポジウム6 AI画像診断と総合健診 AIを活用した呼吸器系診断の現状と進展:肺癌を中心に
梁川 雅弘
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ジャーナル オープンアクセス

2025 年 52 巻 3 号 p. 517-523

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抄録

 近年、医療分野におけるAI技術の導入が急速に進み、特に画像診断領域において大きな変革が見られる。画像診断におけるAIの役割は、異常の早期検出および診断の精度向上にあり、ディープラーニング(DL)を基盤としたAIシステムが診断作業の効率化に寄与すると期待されている。

 本論文では、まずAI技術の基礎として、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)やビジョントランスフォーマー(ViT)の基本的な仕組みを説明し、それらがどのように画像処理に応用されているかを簡潔に述べる。

 肺癌は依然としてがん死亡原因の第一位であり、早期発見が予後に大きな影響を及ぼす。米国のNLST試験や欧州のNELSON試験により、重喫煙者に対する低線量CT検診の有効性が確認されたが、CT検診に伴う偽陽性や過剰診断の問題は今後の重要な課題である。また、低線量CTと画質の維持はトレードオフの関係にあり、低線量CT画像のノイズ低減も喫緊の課題である。こうした背景のもと、AI技術の進歩がノイズ低減や肺結節の検出にどのように貢献しているかを、胸部X線やCT画像の具体的な症例を交えながら解説する。

 AIの診断性能は、すでに放射線科医と同等またはそれ以上であることが報告されている。AIは人間の診断能にも少なからず影響を与えるが、その判断プロセスがブラックボックスである点は課題であり、説明可能なAI(XAI)の開発が求められる。ChatGPTのような生成AIを含め、今後のAI技術の発展を見据え、AIを最強のパートナーとして活用し、肺癌の画像診断の精度向上およびワークフローの改善につなげていくことが期待される。本論文が、呼吸器診療におけるAIに関する知識の整理や、今後の臨床・研究活動の一助となれば幸いである。

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