抄録
最近の我が国では, 各分野で情報技術の応用が盛んであるが, 比較的遅れていた医学・医療分野においても情報化が進められ, 電子カルテのように今や実用の域に達しつつあるものもかなり見られている。
総合健診はそれ自体, コンピュータや多くの情報処理機器を用いており, 情報学と密接な関係があるが, これまではどちらかというと, ハードウェアの使用に重点が置かれていたため, 今後, 健診により得られた多数の健診データについて種々の情報処理を施すことにより, 受診者の健康管理や保健指導に資する新たな知見を取得するなど, 情報学の多面的な応用が期待されている。
本稿では, 総合健診医学における情報学の応用に関する分野のうち, 健診データ処理, 医療画像装置と画像処理およびネットワークの応用に関して, これまでの動向について述べる。さらに, 具体的な事例として, 筆者らの研究のうち, (1) 受診者の生物学的年齢の算出, (2) 継続受診者の生活習慣と疾病危険因子の関連についての分析, (3) Chernoffの顔形グラフによる受診者の健診データの表示, (4) デジタル眼底写真画像撮影システムの開発 (5) インターネットによる地域健康管理支援システムの構築について, その概要を述べる。