総合健診
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35 巻, 3 号
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  • ―朝食欠食する肥満者の食事摂取状況の特徴―
    矢野 義記, 森脇 千夏, 浅田 憲彦, 池辺 淑子, 銅城 順子, 谷口 邦子
    2008 年 35 巻 3 号 p. 317-323
    発行日: 2008/05/10
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    本研究は, 朝食欠食と肥満に関して検討することを目的として, 朝食欠食者の調査から肥満者の特徴を分析した。
    対象は, 平成15年の4月から9月までに人間ドックを受診した男性のうち, 朝食欠食者396名 (平均年齢42.7歳標準偏差±8.5) を対象とした。調査項目は, 食事摂取頻度調査と生活習慣状況調査, 血液検査を行った。調査結果より, 朝食欠食頻度別に1~2日/週欠食, 3~4日/週欠食, ほぼ毎日欠食に分類し, 肥満の特徴を検討するためにBMI25未満 (対照群) とBMI25以上 (肥満群) に分けて平均値の差の検定を行った。
    調査結果から, 各欠食頻度の対照群と肥満群で比較したところ肥満群は, 対照群と比較して有意に魚介類の摂取が高かった。また, 有意ではないが, 欠食頻度が多くなるにつれて肥満群のアルコール類の摂取状況が高くなる傾向にあった。1食あたりの摂取エネルギーは, 両群で欠食頻度が多くなるにつれて有意に増加した。血液検査は, 対照群と比較して肥満群の総コレステロール, 中性脂肪, グルコースがいずれも有意に高値を示した。しかし, 欠食頻度が多くなるにつれて対照群と肥満群で血清鉄が有意に低下した。生活活動強度は, 欠食頻度が多くなるにつれて肥満群の3群間で有意に低かった。
    以上のことから, 朝食欠食をする肥満者の特徴として, 生活活動強度が低い生活習慣とそれに伴うエネルギー消費量の低下, 欠食そのものによる消費エネルギーの低下, 蛋白質食品の過剰摂取, 1食あたりのエネルギー摂取量の増加, アルコール摂取量の増加が考えられた。これらのことから朝食欠食が肥満に関連する一つの要因になることが示唆され, 欠食を改善することが必要であると思われた。
  • 隈本 健司, 原田 サトミ, 伊藤 克之, 栗田 宏一, 原 信之
    2008 年 35 巻 3 号 p. 324-329
    発行日: 2008/05/10
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    平成20年度から特定健診・特定保健指導 (以下, 新健診) が開始される。検査項目のうち血糖検査項目として, (1) 空腹時血糖 (FBS) またはHbA1cのいずれかを選択してよいこと, (2) 両項目を検査した場合はFBSを採用するとされた。平成18年度の当協会における成績を用いて, この方針の糖尿病の捕捉に及ぼす影響について検討した。
    糖尿病治療中のものを除き, FBSとHbA1c共に実施した受診者について, FBS 126mg/dl以上, および/またはHbA1c6.1%以上の受診者に対して, 医療機関の受診を勧奨するコメントを含めた結果報告書に加えて医療機関への紹介状 (以下, 紹介状) を発行した。紹介状が発行された410名のうち, 検査結果等が返送された235名 (回収率57.3%) を対象として検討した。
    FBS126mg/dl以上で紹介状が発行されたもののうち86名 (79.6%) が, HbA1c6.1%以上で紹介状が発行されたもののうち172名 (83.1%) が糖尿病と診断され, 糖尿病の捕捉率には両検査項目間に有意差を認めなかった。
    235名の内訳はFBSのみ基準を満たすもの (FBS群) 28名, HbA1cのみ基準を満たすもの (HbA1c群) 127名, FBSおよびHbA1cの両者共に基準を満たすもの (FBS+HbA1c群) 80名であった。糖尿病と診断されたものは183名で, FBS群中の11名 (39.3%) , HbA1c群中の97名 (76.4%) , FBS+HbA1c群中の75名 (93.7%) であった。
    HbA1c群の糖尿病捕捉率 (76.4%) はFBS群のそれ (39.3%) に比して有意に高かった (p<0.005) 。
    FBS+HbA1c群の糖尿病捕捉率 (93.7%) はFBS群, HbA1c群のいずれに比しても有意に高かった (いずれもp<0.005) 。HbA1cの検査を行わない場合は約53%の糖尿病を捕捉できなかった。FBS, HbA1cの両項目の採用は費用対効果の面からも悪くないと考えられた。
    今回の結果は, 新健診における血糖検査項目としてFBSおよびHbA1cの両項目ともに採用され, かつ結果を公平に評価することが望ましいことを示す。
  • 稲田 紘
    2008 年 35 巻 3 号 p. 330-335
    発行日: 2008/05/10
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    最近の我が国では, 各分野で情報技術の応用が盛んであるが, 比較的遅れていた医学・医療分野においても情報化が進められ, 電子カルテのように今や実用の域に達しつつあるものもかなり見られている。
    総合健診はそれ自体, コンピュータや多くの情報処理機器を用いており, 情報学と密接な関係があるが, これまではどちらかというと, ハードウェアの使用に重点が置かれていたため, 今後, 健診により得られた多数の健診データについて種々の情報処理を施すことにより, 受診者の健康管理や保健指導に資する新たな知見を取得するなど, 情報学の多面的な応用が期待されている。
    本稿では, 総合健診医学における情報学の応用に関する分野のうち, 健診データ処理, 医療画像装置と画像処理およびネットワークの応用に関して, これまでの動向について述べる。さらに, 具体的な事例として, 筆者らの研究のうち, (1) 受診者の生物学的年齢の算出, (2) 継続受診者の生活習慣と疾病危険因子の関連についての分析, (3) Chernoffの顔形グラフによる受診者の健診データの表示, (4) デジタル眼底写真画像撮影システムの開発 (5) インターネットによる地域健康管理支援システムの構築について, その概要を述べる。
  • 今岡 真義
    2008 年 35 巻 3 号 p. 336-340
    発行日: 2008/05/10
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    本邦の死因の第1位はがんで, 年間約32万人ががんで死亡する。全国の5年生存率は50%には届かず, 国はがん対策を推進させ20%アップを目指している。乳がん, 前立腺がんのようによく治るがん, 肺がん, 膵がんと食道がんのように極めて治りにくいがん, 中間の胃がんや大腸がんという3群に分かれるが, 肺がん, 膵がん, 食道がんのような難治がんの治療成績向上を図ることが不可欠となる。
    膵臓は後腹膜に位置し, 早期の膵がんは症状発現が極めて乏しく, その上1cm以下という腫瘍径で治療しても5年生存率は60%に届かない。したがって, より早期の膵がんを発見するには, 高危険群を設定して検診を行って超早期の膵がん発見に努めなければならない。大阪府立成人病センターでは膵管拡張, 膵のう胞の存在は膵がんの高危険群であることをつきとめ, この高危険群に膵がん検診を実施し約9倍の確率で膵がんを診断している。また, 小さい膵がんは高頻度に膵液細胞診が陽性になることを見つけ, 膵液にがん細胞が陽性であるが, 腫瘤形成のないin situの時期に手術した症例は全例生存している。
    一方, 食道がんの手術も頚部郭清, 開胸, 開腹という大きな手術を要し, がんが粘膜下にまで及ぶと生存率も著明な低下を示す。したがって, 粘膜内に留まる食道がんを発見するには内視鏡検査が必要になる。最近, 内視鏡検査でがんとdysplasiaを鑑別することが可能となっており, 早期の食道がんと診断がつけばEMRESDにて切除することが可能となっており, QOLが極めて良い根治治療が得られる。
    したがって, 効率よく早期のがんを診断できる検診法を開発すれば, 小さな浸襲にて根治治療を行うことが可能になり, 快適な生活を営めるようになる。
  • ―その意義と問題点―
    道場 信孝, 久代 登志男, 日野原 重明
    2008 年 35 巻 3 号 p. 341-347
    発行日: 2008/05/10
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    世界最長寿国となった我が国において, 高齢者の健康の維持・増進は医療政策上の重要課題の一つである。寿命の延長とともに, 疾病や機能障害の発症も遅れるとすれば, 我が国の社会的活性化が維持される可能性も期待できる。高齢者の健康の維持・増進においては適切な健康評価と, それに基づく予防的戦略が効果的に実践され, かつ, その効果が科学的に実証されるとともに, 費用/効果比についても評価されなければならない。高齢者の健康評価に基づいて適切な生活習慣変容の指導が行われることによって, 疾病のリスクを減じ, 罹病率や死亡率が低下するという確証は得られていないが, 米国におけるMedicareの給付対象者に対するアウトカム研究では中間報告を見る限りその効果には肯定的であり, 一次, 二次予防における禁煙, 減量, 運動, ストレスマネジメントにはそれらの有用性が期待される。CGAは多職種の医療者による包括的な評価であり, そこでは対象者の医学的問題のみならず, 認知, 情緒身体機能, 社会的, そして, 経済的状況がケアギバーの問題も含めて評価される。これらの結果は支援の必要性を評価したり, 介入やケアのプランを立てる上に役立つが, CGAが最も有効なのは機能的に脆弱化している高齢者の場合であり, その有用性は転倒, 認知機能の低下, 養護施設への入所を予防し, さらに健康感や生活への満足度を高めることにある。CGAとその運用におけるコストと効果に関しては研究が極めて少なく結論は得られていない。CGAによる介入を誰にどのように行うかが重要な課題であり, 少なくとも対象とする高齢者を特定し, すべてのプログラムにCGAを導入し, 介入の態様をケアのプロセスが明らかな基準化されたマネジメントによる長期の慢性ケアとし, かつこれら一連のプログラムに適した多職種連携のチーム医療で行うなどのminimum specificationの枠組みの中でtrialが行われる必要がある。このようなプロセスを経て効果や費用の問題も解明されると思われる。
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